エピローグ
「そいつがクロノの息子か?」
今、僕の目前にヒグマ程の巨体はあろうかと言わんばかりの大男が居た。鋭い視線も相まって並の人物ならば委縮してしまいかねない威圧感を放っている。
彼が天の川銀河全域を統べる大国アークの大統領、キングス=バードだ。ヤミを倒し、その直後彼に連絡を取りこの惑星まで来て貰ったのである。
今現在、飛一神と王五竜の二人が事情を説明している所だ。
が、おもむろに大統領の視線が僕の方を向き、問いを投げ掛ける。
「君が、遠藤クロノの息子か?」
「はい、僕が遠藤クロノの息子のシイル=クリフォードです」
「ふむ?クリフォード?」
僕の返答に、大統領が怪訝な表情をする。どうやら僕の家名がクロノさんともユキさんとも違う事に疑問を覚えたらしい。
その疑念に答えるように、五竜が言葉を挟んだ。
「彼は義理の息子ですよ、キングス大統領。本当の両親とは死別していると聞きます」
「ふむ、そうか……」
どこか納得したような視線を僕に向ける大統領。これ以上話を長引かせてもアレなので、僕は本題を切り出す事にした。
「大統領、今回ブラス=スペルビアが起こした戦争について僕に任せて貰えないでしょうか?」
「ふむ…………どういう事か聞かせて貰えるか?」
「今回の一件、黒幕であるブラスが僕に刺客を送ってきた事。宣戦布告の後に義父さんと義母さんに戦いを挑んだ事も無関係ではないと、今では思っています。義父さんと義母さんに勝利し宇宙全域に宣戦布告したならまだしも、僕に刺客を送る必要までは無かった筈ですから」
「ふむ、なるほど?しかし、だからと言って首を縦に振る理由にはならんぞ」
確かに。それもそうだろう。あくまで、これは僕の我が儘なのだから。
けど、それでも僕は———
「それでも僕は、黙って此処でじっとしている事だけは出来ないんです。二人の敵討ちなんて理由では断じてありません。何と戦うべきか、本当に救うべきは何なのかをしっかり見極めて、その上で僕は事件と正面から向き合いたい!」
その言葉に、大統領はしばらく黙り込んだ。
正直、これで大統領が素直に首を縦に振ってくれるとは思っていない。しかし、それでも僕は此処で立ち止まり大人しくしていることだけは出来ないから。
その意思を視線にこめて、大統領と真っ直ぐ向き合う。
「…………なるほど、分かった」
「では、」
「しかし、それでもまだ動くには早い。もう少しだけ待って貰おうか」
「……と、言うと?」
「我らの切り札、概念兵器に対抗しうる改変兵器がもう少しで完成する所だ。その完成までもう少しだけ我慢して貰う」
そう言って、大統領は不敵に笑みを浮かべた。
反撃の狼煙が、今上がる……