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”豊穣”を冠する後継の勇者  作者: ネツアッハ=ソフ
勝利~アドナイ・ツァバオト~
21/61

2,異能の本質

「来い、ヴォーパル‼‼」


 僕の言葉と同時、手元に引き寄せられるかのように一振りの(つるぎ)が現れた。細身の剣、一般的にレイピアと呼ばれる細剣を横薙(よこな)ぎに振るう。


 それだけで、意思の力が乗った剣風(けんふう)が巨岩を真っ二つに切断(せつだん)する。ヴォーパルソード、この剣は一匹の怪物兎を素材に造られた千変万化(せんぺんばんか)の刃だ。剣というカテゴリに入るなら、例えどのような形状であろうと変幻自在に姿を変える。


 これは、元々意思の力さえあれば限りなく不死(ふし)に近いレベルで再生を果たす力。即ち、意思の力でその形状を再現する力を元に生み出された人造(じんぞう)の異能だ。


 故に、この剣に(ほろ)びるという概念は存在しない。意思(いし)の力さえ流せば無限に再生する。


 いわゆる不滅(ふめつ)の剣だ。


「だが、そんなものがどうした?我が異能の力を(わす)れた訳ではあるまい‼」


「無論、忘れてなんかいないさ!」


 無論、忘れてなんかいない。奴の異能とは、自身の(きず)やダメージを押し付ける異能。


 それはつまり、自身の傷やダメージを一種のテクスチャとして対象(たいしょう)に張り付ける異能だ。


 だからこそ、僕は此処で自身の本質(ほんしつ)を一度見直す。


 そして、僕はヴォーパルソードを地面に()き立てる。


 刃を経由して、意思のエネルギーを地面へと送る。それだけで、まるで豊穣(ほうじょう)の概念が惑星を覆うように灼熱の惑星が植物に(おお)われていく。


「っ、これは!」


 環境操作、ではない。僕が持つ豊穣の異能をフルに運用した結果の事象だ。


 僕の異能は豊穣、つまり大地に生命力(いのち)を与える能力だ。それはつまり、僕の本質とは与える者であるという一つの事実。与える者でありたいという無意識下での僕の願望(がんぼう)に他ならない。


 これは即ち、星に生命(いのち)を与えるという概念。他者に(めぐ)みを与えるという概念に他ならない。


 その事実を以って、僕はこいつを上回(うわまわ)ってみせる。


 ……周囲を覆い尽くす植物(しょくぶつ)の群れが、一斉にヤミへと(おそ)い掛かる。


「っ、この……程度、でっ………‼」


 ヤミは自身を拘束する植物の群れをその牙で()みちぎり、砕き、そして暴れ狂う。しかしそれでもこの圧倒的な物量と質には敵わない。


 僕の意思を流した植物の群れは、云わば統制(とうせい)された一個の巨大な生命だ。故に、植物の群れはまるで巨大な意思に(したが)うように統制されヤミを(おお)い尽くす。


 そして、最終的に巨大な。いや、巨大に()ぎる植物の塊が形成された。


「………っ!………………っっ‼?」


 それでも、ヤミはその植物の塊に圧迫されながら足掻(あが)き続ける。それでも(あば)れ続ける。


 だからこそ、僕は此処で最後の仕上(しあ)げに入る。


「もう、お前も此処で(ねむ)れ」


 そう言って、僕は巨大な植物塊の中で暴れ続けるヤミに自身の生命力を(あた)え続ける。


 彼の異能は自身の傷やダメージを他者(よそ)へ押し付けるというもの。しかし、だからこそ逆に与えられる事には耐性が存在しない。そして、過剰(かじょう)に与えられた生命力は劇毒となる。


 即ち、過剰に与えられた生命力によりヤミはその命を(むしば)まれる。


「………………」


 巨大な植物塊が解け、中からぐったりとしたヤミが墜落(ついらく)する。


 勝敗は決した。僕の、勝利(かち)だ。

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