2,異能の本質
「来い、ヴォーパル‼‼」
僕の言葉と同時、手元に引き寄せられるかのように一振りの剣が現れた。細身の剣、一般的にレイピアと呼ばれる細剣を横薙ぎに振るう。
それだけで、意思の力が乗った剣風が巨岩を真っ二つに切断する。ヴォーパルソード、この剣は一匹の怪物兎を素材に造られた千変万化の刃だ。剣というカテゴリに入るなら、例えどのような形状であろうと変幻自在に姿を変える。
これは、元々意思の力さえあれば限りなく不死に近いレベルで再生を果たす力。即ち、意思の力でその形状を再現する力を元に生み出された人造の異能だ。
故に、この剣に滅びるという概念は存在しない。意思の力さえ流せば無限に再生する。
いわゆる不滅の剣だ。
「だが、そんなものがどうした?我が異能の力を忘れた訳ではあるまい‼」
「無論、忘れてなんかいないさ!」
無論、忘れてなんかいない。奴の異能とは、自身の傷やダメージを押し付ける異能。
それはつまり、自身の傷やダメージを一種のテクスチャとして対象に張り付ける異能だ。
だからこそ、僕は此処で自身の本質を一度見直す。
そして、僕はヴォーパルソードを地面に突き立てる。
刃を経由して、意思のエネルギーを地面へと送る。それだけで、まるで豊穣の概念が惑星を覆うように灼熱の惑星が植物に覆われていく。
「っ、これは!」
環境操作、ではない。僕が持つ豊穣の異能をフルに運用した結果の事象だ。
僕の異能は豊穣、つまり大地に生命力を与える能力だ。それはつまり、僕の本質とは与える者であるという一つの事実。与える者でありたいという無意識下での僕の願望に他ならない。
これは即ち、星に生命を与えるという概念。他者に恵みを与えるという概念に他ならない。
その事実を以って、僕はこいつを上回ってみせる。
……周囲を覆い尽くす植物の群れが、一斉にヤミへと襲い掛かる。
「っ、この……程度、でっ………‼」
ヤミは自身を拘束する植物の群れをその牙で噛みちぎり、砕き、そして暴れ狂う。しかしそれでもこの圧倒的な物量と質には敵わない。
僕の意思を流した植物の群れは、云わば統制された一個の巨大な生命だ。故に、植物の群れはまるで巨大な意思に従うように統制されヤミを覆い尽くす。
そして、最終的に巨大な。いや、巨大に過ぎる植物の塊が形成された。
「………っ!………………っっ‼?」
それでも、ヤミはその植物の塊に圧迫されながら足掻き続ける。それでも暴れ続ける。
だからこそ、僕は此処で最後の仕上げに入る。
「もう、お前も此処で眠れ」
そう言って、僕は巨大な植物塊の中で暴れ続けるヤミに自身の生命力を与え続ける。
彼の異能は自身の傷やダメージを他者へ押し付けるというもの。しかし、だからこそ逆に与えられる事には耐性が存在しない。そして、過剰に与えられた生命力は劇毒となる。
即ち、過剰に与えられた生命力によりヤミはその命を蝕まれる。
「………………」
巨大な植物塊が解け、中からぐったりとしたヤミが墜落する。
勝敗は決した。僕の、勝利だ。




