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”豊穣”を冠する後継の勇者  作者: ネツアッハ=ソフ
勝利~アドナイ・ツァバオト~
19/61

プロローグ

 その瞬間、空間の()らぎと共にそれは(あらわ)れた。


「っ、師匠(ししょう)‼?」


「こいつが、件の生体兵器か‼」


 天地を震わせる咆哮(ほうこう)と共に現れたのは、件の黒い獣。ヤミだった。王五竜と飛一神は共に武器を構え臨戦態勢へと入る。しかし、それを僕は片手で(せい)した。


 怪訝な表情をする二人に真剣な表情で(かえ)す。二人にこいつを倒させる訳にはいかない。何故ならこいつだけは僕の手で倒す(うつ)必要があるからだ。


 こいつは、僕の獲物(えもの)だ。他の誰にも譲らない。


「こいつの相手は僕がします。どうか邪魔(じゃま)をしないで下さい」


「………それは、お前の意地(いじ)か?」


 五竜の言葉に、僕は小さく頷いた。


「はい、こいつだけは僕の手で倒す必要がある。僕自身の手で決着(けっちゃく)を付けないと」


 瞬間、空間そのものすら(ゆが)める殺気が飛んできた。五竜の放つ殺気だ。


 なるほど、これは凄まじい。これが船団国家を()べる長たる飛一神を鍛え上げた師匠。その実力は既に人類の限界を大きく超えていると言えるだろう。


 しかし、それでも僕は退()く訳にはいかない。僕にだって、退けない意地がある。


「…………退かない、か?」


「退けません。これは、僕の戦いです」


「違う、奴等は既に宇宙全土に宣戦布告している。もう、お前一人の喧嘩(けんか)じゃない」


 これは、戦争(せんそう)なんだと五竜は言った。


 そう、奴等は既に宇宙全土に喧嘩を売っている。もう、僕だけの喧嘩じゃない。いや、そもそもここまで来れば喧嘩などというレベルを大きく逸脱(いつだつ)しているだろう。


 もはやこれは、宇宙規模の大戦争(だいせんそう)だ。そう、大戦争なんだ。


「………分かっています。けど、それでもこれだけは僕が一人で戦わなければならない」


何故(なぜ)?」


「友達の為だ」


 そう、これは何てこともない。普遍的な友情(ゆうじょう)の為。


 僕との友情の為に()った、友達の為でもあるんだ。その為の意地だ。


「……………………」


「……………………」


 しばしにらみ合う僕と五竜。やがて、深い溜息を五竜は()いた。


「まったく、本当に意地っ張りだな。クロノによく()ている」


義理(ぎり)とはいえ、あの人の息子(むすこ)ですので」


「ああ、()かったよ。好きにしろ」


 そう言って、五竜は後方へ退いた。一神とアルファもそれに続く。


 そして、僕はヤミと向き合う。其処には、静かに(うな)る奴が居た。


「もう、準備は()わったか?」


「ああ、そろそろ始めよう」


 次の瞬間、僕とヤミは同時(どうじ)に動いた。

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