3,勇者としての覚悟
「勇者、か………」
アルファはそっと呟いたあと、真っ直ぐ僕を見ながら聞いた。
「お前の言う英雄性とは何だ?お前はどんな英雄になるつもりだ?」
「父さんは全てと向き合い、理解し受け止める覚悟を決めて英雄になった。なら、僕は真っ直ぐ相手を見て正面からぶつかっていこう。僕の英雄性は、戦う勇気だ」
そう、僕は正面から僕自身の意思を告げた。そうだ、僕は僕として父さんとは違う英雄性を示し正面から全てと向き合い戦うんだ。全てに対し、僕は僕として自身を示す。
真っ直ぐ、僕は僕として正面から他者と向き合おう。その上で、何と戦うべきか見定める。
それが、僕の示す英雄性だ。
「そう、か………なら、最後に一つだけ聞きたい。妹を、ブラスを止めてくれるか?お前なら妹を止められると断言出来るか?断言してくれるか?」
「止めてみせる。絶対にだ」
即答だった。自然と、僕自身の口から出てきた。
それは、断じて強がりでも咄嗟に出た訳でもない。僕は僕として、覚悟を決めただけだ。
止めてみせる。真っ直ぐ、彼女と向き合い正面からぶつかっていくだけだ。それがきっと救うことにも繋がるだろうと信じているから。信じぬいているから。
だからこそ、真っ直ぐ彼の目を見て力強く答える事が出来たんだ。
そして、それを理解していたからこそアルファも心底から安心したように笑った。
「ああ、安心した。お前になら妹を任せられる。どうか、ブラスを止めてくれ」
そう、アルファ=スペルビアは安堵と共に呟いた。
・・・・・・・・・
直後、その場にじゃりっと地面を踏み締める音が響いた。僕とアルファが同時に振り返る。
其処には、船団国家代表の飛一神とその護衛である王五竜が。どうやら、二人の目的は僕らしく共に僕の方へと視線を向けている。
船団国家………一つの銀河に留まる事なく、数多の銀河を転々とする大規模船団。
その船団国家の総代表と護衛の二人だった。
「クロノの義理の息子が連れ去られたと聞いて、慌てて飛び出してきたが。どうやら妙な話へと発展しているようだな。一体どういう事か聞かせて貰えるな?」
「貴方も、どうか逃げないで話を聞かせて貰えると助かります」
鋭い視線が、僕とアルファへ向けられる。
どうやら拒否権は無いらしい。まあ良い、どのみち何時かはバレるだろうから今の内に話しておいた方が良いだろう。
視線をアルファへ向ける。彼はそっと溜息を吐き、肩を竦めた。やはり、アルファも既にこうなること自体予想が出来ていたらしい。なら、もう黙っておく必要はないだろう。
いや、そもそも黙っておくつもりも無かったというべきか。
そう思い、僕は二人に事情とこれからの僕自身の方針を話す事にした………




