1,暴食の君
端的に言って、アルファとブラスの兄妹は不幸だった。不幸としか言いようのない境遇、そんな中でその兄妹は生きてきたのである。
生きるには過酷に過ぎる不毛の大地で、親からも愛されず友人にも恵まれず、そして周囲からは徹底して虐げられてきた。そんな中、兄妹は身を寄せ合って過ごしてきた。
兄であるアルファが安全地帯を創る異能を発現したのはそれが原因だ。
本来、この異能は自身と最愛の妹を守る為に発現した異能なのである。
だが、妹は違った。というより、どうやら兄とは視点が異なっていたらしい。
妹のブラスに発現したのは暴食というあまりにも凶悪な異能だった。と、いうよりも厳密に言えば捕食した対象をその魂ごと己の内へと内包し永遠に記録するという異能だ。
即ち、その異能は暴食の異能であると同時に群体の異能でもあるのだ。
何故、そのような異能が妹に発言したのか?それは、彼女の特異な視点に原因がある。
ブラス=スペルビア。彼女は人の輝きに魅せられていた。いや、あるいは人間という生き物の放つ輝きに憑かれていたと言った方が正しいだろうか?
彼女は、劣悪な人間関係の中であってそれでも人間の持つ輝きを信じていた。あるいは人間の持つ輝きというものを妄信していたのである。
人間という生き物は劣悪な環境にあって尚強く美しく輝く。いや、劣悪な環境であるからこそ強く美しくそして眩く輝けるのだろうと。
故に、その輝きが失われるのを許せない。故に、輝きを自身の傍に留めておきたい。
そして、それ故にその輝きを自身の内で永久のものとしたい。そんな考えに至ったのだ。
そんな彼女だったからこそ、暴食の異能に目覚めたのである。
そして、暴食の異能に目覚めた彼女は何を思ったのか?どういういきさつがあったのか?
それはアルファには分からない。知るよしもなかっただろう。だが、何かがあったのは確かでありだからこそブラスはこう決断を下したのだ。
自身がこの宇宙で絶対の魔王として君臨しよう。人類にとって絶対の脅威となろう、と。
そう考えたのである。




