プロローグ
———今回の事件の真実を教える。君をかくまう。だから、今は黙ってついてきてくれ。
僕にそう言ってきた謎の青年。色々と疑わしい所もあったが、それでも今はどのみち身を隠す必要があるのは確かだったので黙ってついていく事にした。
此処で、もし彼に僕を騙すつもりがあるのなら僕は全力で抵抗するつもりだ。しかし、恐らくその心配も杞憂という物なのだろう。今の所、青年には僕を騙す素振りは一切無い。
というより、彼には何処か別れ際の僕とクロノさんに近い後悔が見える気がする。
ああ、だからだろうか?色々と疑わしいこの青年に黙ってついて来ようと思ったのは。
そして、青年は僕を連れて惑星を脱出。天の川銀河からすら脱出して別の銀河へと来た。今のご時世惑星間空間転移は当たり前の技術となっている。
一つの銀河を越え、一つの宇宙全域へと領域を拡大した宇宙開拓時代———
その技術を用いて銀河から銀河へと超長距離転移すら可能だろう。
だからこそ、別の銀河へ当然のように転移したのは別に驚かない。僕が真に驚いたのは、到着した惑星がおおよそ人の住めるような環境ではない事だった。
周囲一面が火山地帯。真っ赤なマグマに覆われた、灼熱の惑星だった。その惑星の、まるで其処だけくり抜かれたように出来た安全地帯に宇宙船は着陸した。
「俺の異能で生み出した安全地帯だ。所詮、その程度の規模の弱い異能だがな」
「で?どうして僕をこんな場所に連れてきたんだ?まさか、此処に僕を放り出して丸焼きにするつもりではないだろうな?」
だとしたら、全力で戦う。その意思を示す僕に対ししかし彼は首を横に振った。
どうやら違うらしい………
「まさか、言っただろう?君をかくまうと。だからこそ、あえて人の住まないだろう過酷な環境の惑星に連れてきたんだ。全てはあいつの目をごまかすためだよ」
「………あいつ、ね。まるで事件の首謀者を知っているような口ぶりだな?」
そう言うと、まるで内にある後悔を押し隠すように目を伏せた。
しかし、どうやら真実を話すというのは嘘ではないらしい。やがて静かに話し始めた。
「………まず、俺の名前を名乗ろう。俺の名前はアルファ=スペルビア。今回の事件の首謀者であるブラスの実の兄だ。今回の事件の主犯、ブラス=スペルビアは俺の妹だ」
そう、彼は名乗った。




