エピローグ
「……………………これは」
その場に残った戦闘の痕跡に、キングス=バードは困惑を隠せなかった。それはどうやら部下も同様らしくそれぞれが困惑を顕にしている。
彼等は今、遠藤クロノと白川ユキがシイルという少年と過ごしていた惑星に来ていた。彼等が居るのは天の川銀河の辺境にあるとある惑星だ。其処に、シイルという少年が居る筈だった。
そう、その筈だったのだ。
キングス大統領はその少年を保護する為に、この惑星にまで足を運んだのだ。
しかし、其処には誰一人として居なかった。どころか、戦闘の痕跡が残っている。
……つまり、其処で戦闘が行われていたという事になる。
「一足遅かったか?既に、シイル=クリフォードは敵の手に掛かったという事なのか?」
「大統領!遠藤クロノの自宅にこんなものが残されていました!」
大統領たちが諦観の念を抱きつつあったその時。部下の一人が一枚のメモを手渡した。それは宇宙全土に領土を拡大したこの時代ではあまりにも古い情報の伝達手段だった。
即ち、手紙だ。
大統領はそのメモを受け取ると、其処に書かれていた内容に目を通す。
「………… ………… …………」
しばらくメモを読んでいた大統領だったが、やがて舌打ちと共に部下に命令を下した。
「部隊を動員しろ!早急にシイル=クリフォードを探し出せ‼」
「っ、了解いたしました‼」
・・・・・・・・・
時を同じくして、機械仕掛けの神殿にて。ブラス=スペルビアは玉座に座りながら口元を薄く歪めて笑みを浮かべた。それは、楽しさを堪え切れないという風味の笑みだった。
「そうですか、彼が動き出しましたか。なら、それもまた良いでしょう………」
そう言って、堪え切れない笑みを浮かべながら。楽しさに声を震わせながら告げる。
「兄さん………」




