プロローグ
これは「新時代の英雄は終焉世界を駆け抜ける~無限と永遠の英雄譚~」の続編となります。
僕の、シイル=クリフォードのはじまりはまだ十歳になる前だった。
僕に発現した異能は豊穣の力だった。簡単に言えば、意思の力を生命力へと変換して大地に分け与える力と呼ぶ方がより正しいらしい。つまり、枯れた大地を実り豊かな大地へ変える力だと。
当時の僕には、難しい話は分からなかった。けど、きっと枯れた大地を実り豊かに出来るのならそれはとても素晴らしい事ではないか。そう僕は感じた。
しかし、両親はそうではなかったようだ。少なくとも、そうは感じなかったようだ。
両親は、僕に言い聞かせるように真剣な表情で言った。みだりに人前で力を使ってはいけない。その力は人前では決して使わないようにと。
当時の僕は、意味が理解出来ずに首を傾げていたのを記憶している。
それもそうだろう。今でも理解出来ていないのだから。
何故両親はそんな事を言ったのか?当時の僕は理解出来なかった。けど、きっと何かとても重要な理由が其処には存在したのだろうと、僕はそう思った。
当時、僕達の住んでいた惑星は資源の枯渇が始まり別の惑星への移住が始まっていた。
しかし、残念な事にこの惑星に住む全ての住民が移住可能なほどの余裕は何処にも無い。
結果、僕と両親を含め何人もの住民がこの惑星に取り残された。資源の枯渇が進む惑星に。
そして、資源の枯渇は止まらない。むしろ加速度的に進んでゆく。
一人が死に、十人が死に、百人、二百人と次々と犠牲者が増えていく。そんな中、僕は両親に異能を何故使用させないのかと。僕の異能さえあれば、きっとこの状況を打破出来ると問い掛けた。
そんな僕に、両親はやせ細った顔でそれでも笑った。
両親は言った。お前がそれを使えば、確かにこの惑星は救われるだろう。しかし、同時にこの惑星は其処で全てが終わるだろうと………
分からなかった。言っている意味がちっとも僕には理解出来なかった。
しかし、それでもきっと両親は何かを知っていたんだろう。だからこそ、僕がそれを使いそれによりこの惑星を救う事を良しとはしなかったのだ。
けど。それでも………
それでも、僕はこうも思う。こんなに後悔するくらいなら使っておけば良かったと。
最初から両親に反発してでも、異能を使っておけば良かったと。そう思った。
しかし、もう全ては遅い。惑星の資源が枯渇すると共に、僕の生命力も枯渇していたらしい。
両親がその命を終えた時には、もう僕には異能を行使するだけの余力が残っていなかった。
枯れ木の根を掘り起こして食べ、枯れかけた水源から泥水をすする。そんな毎日。
しかし、そんな日々もついに限界が来た。空腹に、ついに僕の体力も限界に達する。
もう、食べるものも飲むものも何処にもありはしない。資源は完全に底を尽きた。
空腹に倒れ、助けを求める僕の前に彼等は現れ握り飯をそっと差し出した。
遠藤クロノと白川ユキの二人が………