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精霊の紋章  作者: はぐれメタボ
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マーリンの人脈

 王都の近くの街へと出発した俺とマーリンとカートは、道中何度か魔物との戦闘はあったが、盗賊などに襲われる事もなく無事、目的地の街に到着した。


 カートは剣も魔法扱え、前衛が2人になった事で連携も安定した。


 目的地に着いたのは昼前だったので、依頼人の商人から報酬を貰い、今日の内に隣の村まで移動する事にした。


 マーリンやカートと共に魔物を討伐しながら街道を進んで行く。

 昼食と休息を取り、移動を始めて少しした時、始めに異変に気づいたのはカートだった。


「なぁ、なんか焦げ臭くないか?」

「え、そう?」

「いや、確かに何が燃えてる様な……」


 俺達は小走りで小さな丘を超えると、近くの村から黒い煙が立ち上っているのが見えた。


「大変だ、村がオークに襲われてるぞ!」

「行くぞ、村人を守るんだ!」

「疾風よ 我らに駆け抜ける力を【スピードエンチェント】」


 マーリンの付与を受け、俺達は駆け出した。


 村に近づくとオークと戦っている人達がいるのが分かった。

 戦っているのは立派な鎧と剣を装備した5、6人の男たちだ。


 男たちの練度は高く、どう見ても村人や冒険者でない。

 揃いの鎧を着て、同じ紋章が入った盾を持っている事から、騎士ではないかと思う。


 騎士達は強く、オークの猛攻を物ともしない。

 しかし、時折、オークアーチャーが火矢を放ち、村の建物に火を付けている。

 早く討伐しなければならない。


「俺達も行くぞ!」

「ああ」

「騎士達にも付与魔法を掛けるわ」


 俺は近くに居たオークに斬り掛った。


「【紅蓮】」


 カートの剣から生み出された炎がオークを飲み込む。


「風よ 炎よ 猛き戦士たちに 駆け抜ける翼を 断ち切る刃を【デュアルハイエンチェント】」

「これは……付与魔法か!」

「君達は冒険者だな、助力に感謝する」

「皆、冒険者達と協力してオークを討伐せよ」


 俺達は十数分に渡る戦いの末オークを討伐することが出来た。


 指揮を執っていた騎士がこちらにやって来る。


「君達のお陰で速やかに討伐する事が出来た、感謝する」

「いえ、それより他の場所は大丈夫でしょうか?」

「ああ、問題ない。

 我々は別動部隊なんだ。

 本隊がオークの群れの本隊と戦っている。

 村人も村の集会所に避難し、騎士が護衛している」

「そうですか」

「我々もこれから本隊と合流する。

  君達も一緒に来てくれないか?

  もちろん、報酬も約束する」

「分かりました」


 俺達は騎士達と共に村の反対側に移動した。

 そこには俺達が戦った以上の数のオークの死体があったが、すでに戦いは終わっているようで、怪我をした騎士が手当を受けたりしている。


 俺達を連れて来た騎士が連絡を走らせた様で、すぐに騎士達を率いて来た指揮官がやって来るそうだ。

 

「かなり練度の高い騎士達だな」

「一体どこの騎士だろう?」


 俺とカートは首を捻ったが、マーリンはその疑問の答えを知っている様だ。


「彼らの盾に紋章があるでしょ。

  アレ、近衛騎士団の紋章よ」

「「え⁉︎」」


 俺とカートが驚きの声を上げた時、マーリンは片膝をつき頭を下げていた。


「済まないな、待たせてしまった」


 略式の礼を取った騎士達の間からやって来たのは鎧を身に付けた俺とそう年も変わらない男だった。

 しかし、騎士達やマーリンの態度、近衛騎士団の紋章から王族だろうと当たりをつけ、慌ててマーリンを真似て膝をつく。


「楽にせよ」


 俺達は男の言葉を聞き、立ち上がる。


「ん?なんだ、マーリンじゃないか」

「お久しぶりでございます。

  レオンハルト殿下」


 殿下……ってことは王太子じゃないか⁉︎

 と言うかマーリンは王太子殿下と知り合いなのか⁉︎




 レオンハルト殿下に連れられ、騎士達が設営した天幕に移動した。


「天幕の警護は最低限でよい。

 手の空いている者は後始末をしている村人を手伝ってやれ」

「「は!」」


 一緒に来ていた騎士達も、レオンハルト殿下の指示で駆けて行った。

 天幕の中には簡易的な机と椅子がある。


「まぁ、座るといい」

「は、はい、失礼します」

「し、失礼します」

「…………………」


 レオンハルト殿下に促されて椅子に腰を下ろした。

 緊張で声が少し上ずっていたが及第点だろうと思いたい。


「マーリン」

「ええ、静寂よ 我らを包め【サイレント】」


 マーリンが魔法を唱えると魔力の波動が周囲に広がり、外の音が聞こえなくなった。


「これで私達の声は外に聞こえる事はないわ」

「そうか。まぁ、なんだ、元気だったか?」

「ええ、レオやシアも変わった事はない?」

「ああ、シアは今は父上の親書を持ってリュウガ王国に行っているが、いつも通りだ」


 魔法で外に声が漏れない様にした後、マーリンはレオンハルト殿下と親しげに話し始めた。

 正直おれは驚きを隠せない。

 カートが俺の脇腹を肘で突き、小声で聞いて来た。


(おい、マーリンって貴族かなにかだったのか⁉︎)

(知らん!俺だって驚いている)

(じゃあなんで皇太子殿下と気軽に談笑してんだよ!)

(俺に聞くなよ!)


「ん?おい、マーリン。

 お前、連れの2人に俺の事とか説明してないんじゃないか?」

「ああ、そう言えばそうね」


 そう言うとマーリンはレオンハルト殿下との関係を説明してくれた。

 王都にある学院の同期で、3年間、行動を共にした友人だそうだ。


「それで、レオはなんでこの村に?」

「俺達は王都の郊外で演習を行っていたんだ。

  そこに、この村の者が助けを求めてやって来たのだ」

「なるほどね。じゃあ直ぐに王都に戻るの?」

「ああ、すでに救援を頼んであるからな。

 俺達はあまり長居できるだけの物資を持ってない。

 村の復興は救援に任せて帰還するつもりだ」

「そう、じゃあ私達も一緒に連れて行ってくれない?荷馬車の隅でいいから」

「構わないぞ」


 あれよあれよと言う間に王都まで馬車で送って貰える事になった。

 正直、緊張するから歩いて向かいたかった…………

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