ゴブリンの洞窟
俺はアルザックのおっさんと森の中を警戒しながら進んで行く。
アルザックのおっさんは右腕を失っているものの、その動きにぎこちなさは無く、明らかに俺よりも強そうだ。
俺たちはゴブリンが通ったと思われる獣道を進んでいる。
知能の低いゴブリンは自らが進んだ道を隠蔽なんてしない。
枝が折れ、土には足跡が残っている。
それを追跡しているのだ。
…………とアルザックのおっさんが教えてくれた。
アルザックのおっさんは右腕を失い引退したが、元Bランクの冒険者らしい。
俺は世界最強になる男だが、今はまだ最強ではない。
正直、足手纏いでは無いかと思ったが、何とか役に立ちたいと思う。
「止まれ」
アルザックのおっさんが小声で鋭く指示を出した。
その場に屈んで辺りを窺うと茂みを挟んだ先に2匹のゴブリンが居る。
アルザックのおっさんと目配せをし、同時に飛びかかろうとすると、別の茂みからまたゴブリンが飛び出して来た。
新たに現れたゴブリンが2匹のゴブリンに何やらギーギーと伝えると、3匹は走り去って行った。
「なんですかね?」
「さあな、とにかく追うぞ」
俺とアルザックさんはゴブリンが去って行った方に進む。
するとポッカリと口を開けた洞窟を発見した。
「どうやらここがゴブリン共の住処の様だな」
アルザックのおっさんは洞窟の前の足跡を調べながら言った。
「洞窟か」
俺は少し洞窟を覗き込む。
「幸い松明は必要なさそうだな」
アルザックのおっさんの言う通り、詳しくは分からないが洞窟には光を放つ苔が生えていて視界は悪くない。
「どうするアーサー。
お前は戻っても良いんだぞ?」
「馬鹿を言うなよ。早く助けに行くぞ」
オレ達は慎重に洞窟の中に入った。
周囲を警戒しながら進んでいると前方から剣戟の音が聞こえて来た。
岩陰から身を乗り出し様子を窺うと、冒険者らしき少女がゴブリンを相手に戦っている。
そして冒険者の少女の背後には身を寄せ合って怯えている3人の村娘の姿が有った。
「冒険者が助けてくれていたようだな。
俺達も参戦するぞ、準備はいいか?」
「ああ、いつでも行けるぜ」
俺達は岩陰から飛び出し、冒険者の少女を包囲していたゴブリンに斬りかかった。
冒険者の少女は一瞬驚いた様だが、すぐに味方だと判断し、次々とゴブリンを倒して行く。
冒険者の少女が手にしているのは細身のショートソードだ。
ゴブリンの手にした棍棒や鉄グズをまともに受ければ折れてしまいそうだが、力を逸らし上手く受け流し、ゴブリンの隙を狙い、喉や心臓などの急所に突きを放っている。
「クゴォォオ!!!」
あらかたのゴブリンを片付けたところで洞窟の中に雄叫びが響き渡った。
「ちっ!ついてないな……」
アルザックのおっさんは苦笑いを浮かべる
「ゴブリンキングだ」