片腕の門番
村から旅立って1日、俺はようやく冒険者ギルドがある町に辿り着いた。
門でのチェックを受け、町に入った俺は早速冒険者ギルドへと向かう。
冒険者ギルドは向かって右に依頼書が貼られたクエストボードが有り、左にはギルドが経営する酒場が併設されていた。
俺は正面のカウンターに向った。
「いらっしゃいませ、本日はどう言った御用件でしょうか?」
「あ、ああ、冒険者として登録したいんだが……」
くっ!どもってしまった。
仕方ない。
村には同年代が居なかったんだ。
同い年くらいの可愛い受付嬢(巨乳)に緊張してしまうのはしょうがない事だ。
そんな俺の心情など知る由もなく、受付嬢(巨乳)は笑顔で対応してくれる。
「はい、冒険者登録ですね。
ではこちらの用紙にご記入をお願いします。
代筆は必要ですか?」
「いえ、大丈夫です」
俺は受付嬢(巨乳)から受け取った用紙に名前や得意な武器などを記入して行く。
村長に怒られながら勉強したので、読み書き算術は一通りできる…………筈だ。
俺は書き終えた用紙を受付嬢(巨乳)に手渡した。
受付嬢(巨乳)は受け取った用紙を何やらマジックアイテムで弄ったあと、白紙のカードを手渡してくれた。
「このカードに血を一滴つけて下さい」
「わかった」
俺は一緒に渡された針で指先を突き血をカードに垂らした。
すると血はすぐに染み込んで消え、俺の名前やギルドランクが浮かび上がって来た。
「これで今日からアーサーさんも冒険者です。
こちらの冊子にギルドの規則が書かれていますので目を通して置いて下さい」
「ああ、ありがとう」
巨乳(受付嬢)に礼を言ってカードを受け取った俺は、とある箇所から渾身の気合いで視線を外してギルドを後にした。
俺はとうとう憧れの冒険者になった。
これから活躍して俺の名が村まで届くくらい有名になってやる!
安宿に泊まった翌日、俺は早速冒険者ギルドで依頼書を見ていた。
村を出るときに貰った金は有るが早く自分で稼げるようになる必要がある。
Hランクの俺が受ける事が出来る依頼はHランクとGランクだ。
Gランクのゴブリン討伐を受けたいところだが、村のみんなに『調子に乗らずに堅実に』と耳にタコができるくらい聞かされた。
なのでここはHランクの依頼を受けてみる事にした。
薬草の採取依頼だ。
これは常時依頼と言っていちいちカウンターで手続きをする必要はない。
勝手に薬草を採ってきて提出すれば良い。
俺は早速町を出て薬草を探しに向かった。
薬草採取やゴブリン退治など簡単な常時依頼を数回こなした俺は、別の依頼を受けてみる事にした。
近くの村への手紙の配達だ。
クエストボードの依頼書を剥がしてカウンターで手続きを受ける。
目的の村はこの町から半日も掛からない距離にある。
今から出れば夜には帰って来れるだろう。
特に魔物に襲われる事もなく目的の村が見えて来た。
「ん、この村に何か用か?」
村の前に立っていた男に話し掛けられた。
腰に剣を提げた男には右腕が無かった。
田舎の村によく居る、怪我をして引退した元兵士や元冒険者と言った感じの門番だ。
「ああ、ギルドの依頼で手紙を届けに来た」
「そうか、一応、ギルドカードを見せてくれ」
「わかった」
俺は作ったばかりのギルドカードを門番に見せる。
「確かに、では村長のところに案内しよう。
手紙は村長に預ければ村人に配ってくれる」
俺は門番の男について村の中に入って行く。
そして村長に手紙を渡し、依頼完了の書類にサインを貰っていた時だった。
村人が1人、村長の家に飛び込んで来た。
「村長!大変だ!」
「どうした、何かあったのか?」
「畑で仕事をしていた娘達が3人、ゴブリンに攫われたんだ!」
「な、なんじゃと!」
「た、多分最近裏山に住み着いた群れだ。かなりの数だった」
「うむ……冒険者ギルドに討伐依頼は出しておったがもう被害が出るとは……」
手紙を届けに来ただけなのに大変な事が起きた。
俺が戸惑っていると門番の男が名乗りを上げる。
「村長、俺が助けに向かう!」
「しかし、いくらお主でも1人では……」
確かに門番のおっさんはかなり強そうだが、1対1ならともかく片腕で群れを相手にするのは難しい。
その時、俺は決心した。
「俺も行くぜ!」
俺の言葉に門番の男が忠告する。
「これは依頼じゃ無い、お前には関係の無い事だぞ?」
「俺はいずれ世界最強になる男だ。
もしここで見て見ないフリをしたりなんかしたら世界最強になんてなれるはずがない!」
「……………分かった。
ただし、俺が無理だと判断したらすぐに引き返すんだぞ?」
「分かった、俺はアーサーだ」
「俺はアルザック。よろしく頼む」
こうして俺とアルザックのおっさんは拐われた村人を救出する為森に向かうのだった。