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いきなり転生、これはひどい

「おにぃ…」


「声が聞こえる、何処かで聞いた事がある声だ。そうだ、確か…」


「おにぃ」


「妹の桜だ。でも妹は死んだはず。そういえば僕も死んだんだっけ、迎えに来てくれたのか桜」


「おにぃ」


「あぁ、今行くよ。たった1人の肉親だもんな。これからはずっと一緒だ」


「おにぃ、起きて」


「え?」


ゆっくりとまぶたを開ける、ボヤけていてよく見えないが、目の前に誰かいる。


「桜?」


「やっぱりおにぃだ!会いたかったよおにぃ!」


ボヤけた視界にようやくピントが合う。目の前には女性らしい人物が目に入った。


「…誰?」


「ひどい、おにぃの妹の桜だよ」


「いや、確かに僕の妹は桜だけど君じゃないよね?というか、妹は死んだんだよ、もうこの世にはいないんだ」


何年も一緒に暮らしてきた妹の顔を忘れるわけが無い、目の前にいる女性はどう見ても桜ではなかった。


「おにぃ、桜は桜だよ!嵐の日におにぃを追いかけて、その後川に流されて、気がついたらこの姿になってたの」


「え、ホントに桜なの?」


確かに、妹はあの日川に流されて命を落とした。桜は日本人だ、しかし、目の前にいるのはどう見てもそうではない、そんな人物がその事を知っているわけが無い。


「うん、桜だよ」


「そうか、ここが天国なのか、僕も死んだんだもんな」


「でも、今こうして2人とも生きてる。良かったもう二度と会えないのかと思ったよぉ」


そう言うと桜を名乗る少女はポロポロと泣き出した。


「生きてる、俺が?」


その割には手足の感覚がない、目もぼやけていてよく見えない。


「あの、桜さん?」


「何?おにぃ」


「生きてる割には、全然体が動かないんですけど。目もよく見えないし」


「それはそうだよ、だって手足着いてないし」


それって、あの事故で手足無くなったってこと?何それ笑えない。


「桜さん?僕今どんな状態なのかな」


「もう、おにぃは僕の事桜って呼んでたでしょ」


「今はそんな場合では…」


「桜って呼んでくれないと、言う事聞かないもん」


「分かったよ、桜兄ちゃん今どんな状態か確認したいんだけど」


「う…ん、いいけど…」


なんだその歯切れの悪い返しは、やばい見るのが怖くなってきた。桜は僕を軽々と持ち上げる。


あれ、桜ってこんな大きかったっけ?小学生だよな、いつの間にこんなにでかくなったんだ。


「はい」


鏡に2人の姿が映し出された。


「…」


「おにぃ?」


「な…なんじゃこらぁぁぁぁーー!?」


そこに映し出されたのは、18ぐらいだろうか、金髪の美しい美少女(桜)と、得体の知れない黒い塊(俺)が映し出されていた。


「ちょ、ちょっと待て100歩譲って桜は分かる。けど俺やばくない?もう原型とどめてないんだけど!これ本当に俺なの?」


「可愛いよね、こうむぎゅーってしたい」


「これの何処が可愛いんだ、宇宙人の卵みたいだぞ!よくこんなモノ抱えていられるな」


「えー、可愛いのに」


「え、え、道理で見えにくいはずだよ、目ん玉1つしかないじゃん、キッも、どうなってんのこれやばくない?」


「お目目大きくて可愛いよ?」


「…、桜はいつの間にそんなに大きくなったんだ。まだ小学生だったよな?それに髪まで染めて、兄ちゃんはそんな子にした覚えはないよ」


「この髪は生まれた時からだし、もう18歳だから当たり前じゃない」


何を言ってるんだこの妹は、いや待てよもう少しよく考えろ。確か桜は、川に流されて気がついたらこうなってたって言ってたな。そして、俺も死んだ。その2人がこうして別の姿で居るってことは。


「もしかして、ここって俺たちがいた世界とは違うの?」


「うん、そうみたい。もう会えないって思ってたけど偶然おにぃを見つけたの」


「そっか偶然見つけたのか、って待て、俺こんな姿でよく俺だと分かったな」


「おにぃを間違えるわけないよ!」


「その理屈はおかしい、そもそも何処で拾ったんだよ」


「んー、魔王を倒した時、お腹の中からでてきたの」


「いやいや、それ明らかにおかしいよね、どう見ても魔物だよね、魔物以外の何物でもないよね。よくそんなモノ持って帰ろうと思ったよね」


「でも、おにぃなんでしょ?」


「そうだけどっ!それでいいのか桜ちゃん!」


「うん!」


「その時の状況をもう少し詳しく教えてくれない?」


「えーっとね、魔王とか言うやつを倒したらなんかお腹の辺りからボコボコって出てきて、その時に思ったの」


「何を?」


「え…、おにぃ?って」


「いやいや、どこにも兄ちゃん要素なかったよね」


「まぁ、どうでもいいじゃない、おにぃなんだし」


満面の笑みで笑いかけてくる桜をそれ以上責めることは出来なかった。ふとコンコンっとノックのような音が聞こえた。


「誰だ」


先程までの俺の妹だった桜とは明らかに雰囲気が変わった。その鋭い眼差しはドアの方を睨みつける。


「サーダイオンでございます。そろそろパレードが始まりますゆえお迎えに参りました」


「うるさい、今僕は忙しいんだ」


え、桜ってこんな荒々しい感じだったっけ、もう少し無口だけど可愛い感じだった気がしたんだけど。


「しかし、皆魔王を倒した勇者の凱旋を心からお待ちしております」


勇者?魔王?なんだそれは。


「黙れと言っている。僕に指図するな」


「…」


「あの、桜」


「何?おにぃ」


「よく分からんが、行ってあげた方がいいんじゃないか?」


「そんなのより、おにぃの方が大事だもん」


「俺は大丈夫だから…いや大丈夫じゃないけど、サーダイオンとかいう人待ってるみたいだし、行ってあげなよ」


「おにぃがそう言うなら…、分かった少しの間待っててね」


桜はベットに優しく俺を寝かせると部屋を出ていった。


「おぉ、おいで下さいましたか」


「うるさい、貴様のためではない」


「分かっております、ささこちらに」


勇者に魔王にパレードか、全く意味が分からんぞ。

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