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序
初投稿です。よろしくお願いします。
今回は短いですが、次回から長めになります。
目を開けると、暗闇の中に橙色の光に照らされた男の顔が浮かんでいた。就寝前に消したはずの燭台に火が灯っていた。
ありえぬ近さにいるはずのない男がいて、思わず琴子は息を呑んだ。すでに両の手首を男の手に掴まれ、腰から下には男の重みが感じられて動けなかった。
「琴子さま」
男の低い声で名を呼ばれ、琴子の体にゾワリと震えが走った。胸の鼓動はすでに痛い程に打っていた。
「あなたを殿下の妃にすることはできません。今からわたしの妻になってください」
普段は琴子の姿など映すことのない男の瞳が、今は琴子だけを見つめてギラギラと光っていた。