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第19話 存在意義

 刻一刻と出発の時間が迫って来る。

 高鳴る胸の鼓動。

 今から始まる旅へ高揚感のからか、もしくは己の決断に対する焦燥感からか。

 優柔不断な自分が嫌になる。

 自分のことくらい自分で決めたい。

 でも間違った道には進みたくない。

 なんて我が儘なのだろう。

「どうしよう……どうしようどうしようどうしよう……!」

 早く決めなければ。

 一足先の遅れたスタートを台無しにしたくない。

 したくないのだけれど、そうなってしまう。

 今のままだと。

「私は一体何がしたいんだ……」

 この問いも何度自らに問いかけたことだろうか。

 しかしその度に答えは返ってこない。

「私は、私は……」

 もうわからなくなってきた。

 何が何だかわからない。

 考えれば考えるほど思考が追いつかない。


「そう言えば、何でこんなところにいるの……?」


 自分の存在意義が危うい。

 何故この世界に存在するのかがわからない。

 まず、私は誰だろうか。

 考えれば考えるほど思考が追いつかない。

 いや、追いつかないのではなく、追いつくことを拒否している。

 それがわかってしまう自分が怖い。

 あれは突然の出来事で少々面食らった。


 ―二度と後悔しないように―


 ふとあの時の言葉が思い出された。


 ―新たな人生を始めたい―


「新たな人生って……なんだよ……」

 その言葉を呟いた瞬間、なぜか頬を涙が伝った。

 その涙は止まることなく次々と流れ続ける。

「早速……後悔してるじゃん……」

 壁にもたれるようにして、私はその場にしゃがみ込んだ。

 膝に顔を埋める。

 このまま寝てしまって、気付いたら元の世界に戻っていたりしないだろうか。

 実は長い長い夢で、実は死んでいなくて、目が覚めたら自室のベッドの上で、支度をして学校に行く。

 友達とワイワイ談笑して、辰茉とお話ししながら帰って、家族で夕飯を囲んで、また新たな一日が始まる。

 そんな日常が戻って来る。

 目的が見つからない以上、この世界にいる意味がわからない以上、自分がもはや誰かわからない以上、もうここに用はないのだ。


「本当に……何だったんだろ……」


 夢にしては、タチが悪い。

 早く覚めないかな。


 馬車がけたたましく車輪の音を立てて離れていく。

 街行きの馬車は出てしまった。

 これで次は明日だ。

 それまでに覚めていてほしい。


「あれ、サヤ?何やってるの?馬車出ちゃったよ?」

 止まっていた私の涙が再び頬を伝い始めた。

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