第16話 別れ
小高い丘の頂上に登ると村が見えた。
赤色をした特徴的な瓦が目を惹く。
「あれが目指して村ですか?」
「そう。あそこがレーネ村だよ」
後ろで遠くを見つめていたトゥーナに声をかける。
「トゥーナ、見えたよ」
「村着いた?」
私の肩越しにリヤカーから身を乗り出すトゥーナ。
「レノ!村着いたって!」
熱心に本を読んでいたレノは、トゥーナに肩を叩かれると本を閉じ、こちらに向かってきた。
「帰ってきたよ。レーネ村」
私はそう言うと再びリヤカーを引き始めた。
いつも通り、村の周囲を囲う柵には見合わぬ大きさの門をくぐる。
そしてそのまま村の中心へ。
天高く吹き上げる噴水の前でリヤカーを止めた。
「はい、レーネ村到着!」
「お疲れ様!」
「お疲れ様、お母さん」
トゥーナとレノがリヤカーから飛び降りる。
「さて、ここからなら一応国内のどこへでも行けるから。多分今から出る遠出の馬車はないだろうし、ここで一泊するか近場の村に向かうかだね」
はい、と私は麻袋を渡した。
「何ですか?これ……」
受け取ったサヤは首を傾げる。
「路銀だよ。お金ないでしょ?」
一文無しなサヤがどこか遠くに行くためには資金が必要だった。
「そんな、受け取れませんよお金なんて!」
中身を確認するなり受け取った麻袋を返そうとする。
「いいよいいよ、受け取って。お金がないといつまでも先に進めないよ」
「別に……ここまで……」
私はサヤに麻袋を半ば強制的に握らせる。
ここ時間を取らせてしまうのも申し訳ない。
彼女はこれから進む道があるのだ。
「またどこかで会えるといいね」
「そうですね。きっとまたどこかで会えますよ」
とても短い間だったが、サヤと過ごしたあの時間は楽しかった。
「元気でね、サヤ」
私は両腕を前に出した。
「はい、ありがとうございました。ユイさん」
サヤも腕を広げてこちらに向かってきた。
私とサヤはグッとハグをした。
「トゥーナも!」
「わ、私も……!」
そばで見ていたトゥーナとレノもサヤに抱きつく。
「気をつけて、行ってらっしゃい」
「はい。行ってきます」
母親と娘のように、そう言葉を交わすと私たちは離れた。
「じゃあ、お元気で。トゥーナちゃんもレノちゃんもまたね。バイバイ」
サヤは最後に深くペコリとお辞儀をすると、クルリと振り返って東側の門へと向かって歩き始めた。
途中で振り返ってこちらに手を振る。
私たちも手を振り返す。
「元気でね!サヤお姉さん!」
「お気を付けて!」
トゥーナとレノがそう叫ぶと、サヤは振り返りニコリと微笑んだ。
サヤが角を曲がり見えなくなるまで三人で手を振り続ける。
「生きる目的を見つけて、この新しい世界を思う存分に楽しんでね……」
姿が見えなくなったサヤにそう言葉をかけると、私は振り返り、トゥーナとレノを連れて商店街へ向かった。




