第13話 風邪薬
なぜか一緒に入りたいと言い出したサヤと一緒に湯船に浸かること、おそらく一時間強。
談笑しているうちに、どうやら長湯をしてしまったようだ。
体を拭いて寝間着に着替えると、早速寝る準備を始めた。
「じゃあ今日はここで寝てくれていいから」
「はい、ありがとうございます。本当に何から何まで……」
先ほど選んだ寝間着を身に纏い、私のベッドの上で正座をするサヤ。
「この世界に電気はないから、そこのランプを消してね。消し方はわかる?」
サヤがランプをまじまじと見つめる。
「消し方……これですか?」
サヤがランプの根元に付いている小さなツマミを指差した。
「そう、それを左にひねると消えるから。寝る時に消してね」
「わかりました。忘れずに消します!」
あとは……
「この時期朝方はかなり冷え込むから、しっかり布団かけて寝てね」
窓を閉めきっていても寒い。
家を建てた時、窓周りに藁を詰めて出来る限りの防寒対策はしたつもりだが、それでも寒い。
「簡単に風邪ひくから」
「あ……風邪は存在するんですね……」
「当然。もし風邪ひいても病院なんてないから薬ももらえない。あるのは苦い薬草だけだよ」
何度か布団が行方不明になり、朝から薬草の世話になった事がある。
もう二度とあの薬草は飲みたくない。
何種類もの草を混ぜ合わせて搾った、いわば風邪用青汁。
途轍もなく苦い。
一度経験してもらいたい気持ちも山々だが、流石にサヤに飲ませるわけにはいかない。
「本当に気をつけてね?」
念を押してお願いする。
「じゃあそろそろ寝ようか。私は隣の部屋で寝てるから何かあったら呼んでね」
「はい、了解です!」
「じゃあおやすみ」
「おやすみなさい!」
私はサヤがランプを消して布団に入るのを確認すると部屋の戸を閉めた。
「さて、寝よう」
となりの部屋の扉をそっと開ける。
電気の消えた部屋の中、中央に置かれた私のより少し小さめのベッドに寝そべる二つの人影が見えた。
ベッドを覗き込んでみると、トゥーナの腕にレノがしがみ付きながら寝ていた。
二人は顔を合わせて、静かに寝息を立てている。
「一日お疲れ様。おやすみなさい」
トゥーナとレノの頭を順番に撫でると、私はそっとベッドに潜り込んだ。
三人で並んで寝るこの光景。
トゥーナとレノに部屋が出来た時、それぞれに新しくベッドを買った。
のだが、なぜか二人とも私のところに来て、私のベッドで寝る。
結局は個別にベッドがあっても一箇所に集まるのだ。
そんないつも通りの光景に頬を緩ませ、私は目を閉じた。




