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第10話 彼女の選択

「サヤ、紅茶飲む?」

 カップを用意しながらそう問う。

「あ、じゃあお願いします」

 私は頷くと、あらかじめ沸かしてあったお湯の中にティーバッグを入れた。

「残念ながらミルクはないんだけど、砂糖はあるよ。出そうか?」

「何もなしでもいいですよ。さっきもそのままで頂きましたし」

 サヤからそんな返事が返ってきた。

 そう言えばそうだったな。

「ミルクはないんですね」

 ふとサヤがそんなことを問うて来た。

「そうなんだよね。色々厳しいんだよ」

 冷蔵庫がないこの世界では、腐りやすい乳製品のほとんどが日持ちしない。

 そのため長期間貯蔵しておくことが困難なのである。

 この前どこかで氷を保冷剤代わりに使うと言う方法を聞いたことがあるが、まだ氷ができるほど辺りは寒くない。

 もうこうなれば、直接牛でも飼おうか。

 私はお盆に紅茶の入ったカップ二つ乗せて、ダイニングテーブルに運んだ。

「はい、おまたせ」

 サヤはペコリと頭を下げると、早速カップを口に運んだ。

 一口飲み、

「やっぱり美味しいです。さっきと比べて少し甘い感じがしますが?」

 そう言った。

「でしょ?さっきと茶葉変えてみた」

「やっぱり」

 サヤが笑った。

「やっぱり甘い感じするよね」

 向かい側でコクリと頷いた。

「どうやらこちらの世界の紅茶のほとんどが甘いらしい」

「そうなんですか?」

 こちらの世界に来てからかなりの種類の紅茶を飲んだが、ほとんどが甘かった。

 茶葉が甘くなるような土壌なのか、それとも茶葉の種類からなのか。

「私的にはもう少し甘さ控えめでもいいんだけどね」

「そうですか?私はちょうどいいと思いますけど」

 一口啜る。

 やはり少し甘い。

 今度村に行った時に、もう少し甘さ控えめな茶葉を探してみよう。

 夕飯前に出した紅茶の葉ももうそろそろなくなる頃だし。


「行く先ないんだよね?」

 そう言えば、と私が話を切り出す。

「はい。まだ何も知らないんで」

 サヤが首を縦に振った。

「じゃあ明日村に行ってみない?」

「村ですか?」

 日用品の買い物も兼ねた、サヤの今後の行き先探しとして。

「その村まで遠いんですか?」

「うーん、そこまで遠くもないけど……別に歩けない距離でもない」

 前回もその前も歩いて行っているし。

「いいですね。一回大きな村も見てみたいですし」

「じゃあ決まりだね。明日は村に行こう」

 こう言っておいて、わがままを言うとこのままサヤと一緒に暮らしたかった。

 初めてこちらの世界であった、前世が同じ人。

 前の世界を知っている人。

 一緒にいられたらどれほど心強いだろうか。

 しかし、サヤはやりたいことがあってこちらの世界に来ることを選んだのだろう。

 それは彼女の選択だ。

 快く、彼女を異世界生活に送り出してやろう。

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