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第9話 ジャガイモ

「それで、今後の行き先とかあるの?」

 あの世界のことについて少し話して、少し涙を流して、少し落ち着いてから私はサヤにそう話しかけた。

「行き先、ですか……?」

 サヤは首をかしげる。

 話を聞く限りこちらの世界に来たのはつい先ほどとのこと。

 まだ何も知らない状態で行き先があるとは考えにくかったが、一応問うてみた。

「行き先は特に決まってないですね。まだあまりこの世界のこと知らないですし」

「やっぱりそうだよね」

 窓の外に目をやる。

 先ほどまで部屋をオレンジ色に染めていた夕日はもう既に山の向こうに沈み、あたりは闇に包まれていた。

「もう外も暗いし今日は泊まってく?」

 まだ何も知らない女性が夜中に森を彷徨うのも危険だろう。

 行く宛が特に無いのなら、夜が開けるまでここで休んでもらうことにしよう。

「えっと、いいんですか?」

「夜の森は危ないしね。部屋も一応あるから泊まっていきな」

 そうは言ったが、冷静に考えると部屋の余りはない。

 当然ベッドのあまりもない。

 物事はちゃんと考えてから口にした方がいいな。

「泊まってきなって言っておいてアレだけど……私のベッドでいい?」

 本当に申し訳ないことをしてしまった。

 これでもし他人の寝たベッドでは寝られない、と言われたらどうしようかな。

「あ、ユイさんがいいのでしたら全然大丈夫ですよ!そんな泊めてもらう身でそんな贅沢なこと言えません!」

「そう?なんかごめんね?」

 よかった。

 これでひとまず寝床は確保することができた。

 さて、私は今日どこで寝ようかな。

 まあトゥーナかレノのベッドにでもお邪魔することにしよう。

「よし、ササっとご飯作っちゃうからソファででもくつろいでて」

 話に夢中で晩ご飯を作るのを忘れていた。

 急いで作らなければ。

 私は席を立つと、椅子にかけてあったエプロンを巻いてキッチンへ向かった。

「あ、ご飯作りますか?よければ私も手伝いさせてください!」

 そう言ってサヤがキッチンにやって来た。

「あ、別に休んでてくれて構わないけど……」

「いやいや、手伝いますよ!」

 サヤは腕まくりをして料理する気満々だ。

「手伝ってくれるの?じゃあお願いしようかな」

 本人が言っているのだ。

 それなら手伝ってもらおう。

「えっと、じゃあこれの皮むきをお願い」

 そう言ってジャガイモもを手渡した。

「ジャガイモの皮むきですね、了解です!」

 サヤは返事をすると、早速皮むきを始めた。

「それなら私は……これを洗うか」

 先ほどトゥーナとレノが森で採ってきてくれた山菜を洗うことにした。

 蛇口をひねり、冷たい水にいじめられながら葉を一枚一枚丁寧に洗っていると、サヤが次の仕事を求めてきた。

「次は何をしますか?」

「え、もう剥き終わったの?早くない?」

 驚くほど綺麗に、指定した分のジャガイモの皮が剥けていた。

「慣れてますから。次は何します?」

「あ……じゃあ、そこにある鍋で今剥いたジャガイモを炒めてくれる?」

「わかりました!」

 平らなフライパンのような鍋に油を引き、手際よく準備をしていく。

「焼き目が付くくらいでいいよ」

「了解です!細切りでいいですか?」

 私が頷くと、まな板にジャガイモも並べ途轍もない速さで切り始めた。

 厚さにバラツキはなく、まるで機械にでもカットされたかのよう。

「え……速くない?速すぎない?」

「慣れてますから」

 そう言い終わる頃にはもう炒め始めていた。

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