第6話 山菜とお姉さん
陽が傾き始めた。
そろそろ帰って来る頃だろうか。
読んでいた本を棚に戻すと、窓の外に目をやる。
「本当に大丈夫かなぁ」
鬱蒼と茂る木々の奥へ目を凝らし、二人の姿を探してみた。
「迷ったりしてないよね……」
森に入ったら迷わないように木に印をつけて進め、と教えてある。
忘れてさえいなければ戻って来られるはず。
二人が帰って来ると信じて、そろそろ夕飯の支度でも始めようかな。
そう思っていた時、玄関が開く音が聞こえた。
「帰ってきたかな?」
席を立ち玄関へ向かう。
「ただいま!」
リビングの扉が勢いよく開かれ、そこからユーナを肩に乗せたトゥーナと、山菜の入ったカゴを持ったレノと、見知らぬ女性が現れた。
「お帰り。遅かったね、何かあった?」
「ううん、ちょっと奥まで行ってただけ」
トゥーナがそう返事をした。
「そうなんだ。たくさん採れた?」
カゴを持っているレノにそう問うてみる。
「うん、はい」
レノがスッとカゴを差し出した。
いっぱいに詰め込まれた山菜が目に入る。
「こんなに……」
二人で採ったとは思えないほどの量。
「本当に二人だけで採ったの?」
「うん!トゥーナとレノで採った!」
二人のおかげで数日は山菜に困らなくなった。
「今日はね、いつもと反対の森に行ったの!」
「ああ、反対の森か」
普段よく行く森とは反対側の、小川を渡った先にある森。
普段はなかなか行かないので、山菜も確かにたくさん生えてそうだ。
「それでね!山菜採ってたらお姉さん見つけたの!」
「え?」
あっちの森ってお姉さん生えてるの?
お姉さんが生えている状況がイマイチ掴めず、戸惑っていると、
「あの、お邪魔してます……こんにちは」
二人の後ろにいた女性が声を発した。
「このお姉さんね、森で迷子になってたからここまで案内してあげたの」
「迷子?あの森で?」
よかった。安心した。
森にお姉さんなんて生えていなかったんだ。
でもなんであの森の中で迷子になっていたのだろうか。
そんな私の疑問を読み取ったかのように、
「なんかすみません。私自身もなんで迷子になってたかいまいち把握できてなくて……」
女性がそう答えた。
「え、わからないの?」
なんだそれ。
まさかまた記憶喪失か。
「村にでも落としてくれるのかな、なんて思ってたら森の中でして」
「どういうこと、それ」
言動も怪しいぞ。
頭でも打ったのかな。
「いや……まずどこに落とすなんて聞いてないぞ。それに私も落として欲しい場所とか指定しなかったな……これはやらかしたか?」
女性は急にそんなことを呟き出した。
「えっと、立ち話もあれなんで中にどうぞ。お茶でも出しますんでゆっくりしていって下さい」
ひとまず座って話を聞こう。




