第1話 やり直し
「ん?どこだここは……あれ?浮いてる?」
ふと目が覚めると、私は浮いていた。
浮いていたのである。宙に。
勿論足元には地面などはなく、ただ底のない淡いピンク色の世界が続いていた。
「んんん?」
今の状況がよくわからない。
「絶対日本じゃないよな……」
私は淡いピンク色の空間をゆったり浮いていられる場所は知らない。
「日本でも……外国でもなさそうだな……」
ここはどこだろう、と一生懸命に考えていると
「御機嫌よう、お嬢さん」
誰かが誰かを呼んだ。
他の誰かのことだろうな。
「お嬢さん、貴女ですよ」
また誰かを呼んでいる。
「早く返事してあげなよ……」
そう愚痴をこぼし再び考え事を再開しようと思ったら、そんな考え事が一瞬で吹き飛ぶような光景が目前に展開された。
「あなたのことですよ?」
目の前に女性の顔が現れた。
「うわッ!」
私は驚いてその場から飛び退いた。
「変なお人ですね」
その女性は私の顔を覗き込むとそう言った。
「先程から声をかけ続けていたのに一体何故返事をしないのです?振り向くぐらい出来るでしょう?」
女性は少し怒ったように腰に手を当てながら一人でブツブツと文句を言っている。
あれ?この女性……
私はあることに気がついた。
そしてその発見から、私はここがどこだかなんとなく知ることができた。
「あの、すみません。あの……もしもーし!」
「もっとしっかり――……な、なんです?」
女性は急に文句を言うのをやめ、少し顔を赤らめながら顔を上げた。
「ここって……」
「ん?」
「あの世ですか?」
「……」
「……」
「……」
しばらく沈黙が続いた。
そして、先に口を開いたのは、
「……貴女には気の毒かもしれないけれど……一応あの世で間違い無いわ」
この人女性だけど天使だった。
「……やっぱり……そうですか」
少し悲しかった。
まさかとは思っていたけれど、ここは天国なのだ。
一瞬夢かな、と思い頬をつねってみた。
右頬がヒリヒリする。
「ね、ねえ!そう気を落とさないでよ!確かに貴女はあちらの世界で命を落としたけど!でもね、その……ち、チャンスがあるわ」
「チャンス……?」
なんだチャンスって。
「その、貴女はまだ若いじゃない?だからさ、もう一回やり直してみない?新たな人生を」
新たな人生?
やり直し?
「そんな事できるんですか?」
「まあね。そのかわり元の世界には戻れないわ。別世界になってしまうけど」
私は考えた。
よく状況が掴めないまま天使に会って、さらに人生のやり直しができるって。
頭の処理が追いつかない。
「どう?やり直し。あ、心配しないで。その年齢からやり直しさせてあげるから」
天使はそう言った。
ここまでの話を聞いて思った。
「やっぱり……」
「ん?」
天使が首を傾げる。
「もうここまで来たら夢にも感じられなくなってきちゃって。死んだって確証は掴めてないけど、なんとなくそんな気がする……」
天使が何かを言おうとして、口を噤んだ。
「私、新しい世界でやり直します。まだまだやりやいことはたくさんあったし、親孝行もできなかった。せめてものお別れの言葉も言えずに……後悔ばっかり」
私はグッと天使の目を見据えた。
「でも、だからこそ新しい世界でやり直したい」
そして強くそう言った。
「二度と後悔しないように、新たな人生を始めたい!」
天使はコクリと頷くを手を掲げた。
すると私の視界は眩しくホワイトアウトし、意識がだんだんと遠のいて行った。




