第26話 星空
「星が綺麗だねー」
「手が届きそう……」
三人で仰向けになって並ぶ。
ランプを消して上を見上げると、雲ひとつない穏やかな空に光る星々が視界に飛び込んできた。
プラネタリウムでしか見たこともないような星空が今、目の前に展開している。
ここはと言うと、先ほどの張り終えたばかりの床に敷いたクッションを上だ。
そこに三人で川の字になって寝転がっていた。
建築途中の屋根がない家で、せっかくなので星を見ながらここで寝ようと提案したのである。
雨が降る雲行きでもなかったし、心配はいらない。
「あの星赤いね」
「あっちは青いよ」
トゥーナとレノは色とりどりの星たちを指差し、小さな天体観測会を開いている。
「ねえお母さん!あの星なんて言うの?」
トゥーナが指で示す。
「ん?どれ?」
残念ながら、無数に散らばる星の中の一つを指で指されても分かるわけがない。
「あの……赤い星。青い星のちょっと横にあるやつ」
赤い星?
たくさんあるぞ?
「赤い星がありすぎてわからないんだけど……」
「え、だから、あそこの!」
「んんんん??」
トゥーナは分かっているだろうが、私には全くわからない。
なんたって、トゥーナの指している場所は分かれど、赤い星が近くに五つほど寄り集まっているのだから。
「姉さん、多分赤い星がありすぎてお母さんわかってない……」
「あ……本当だ。赤い星たくさんあった」
トゥーナもやっと気付いてくれたらしい。
この星空。
下手をしたら星の数は、東京より桁が四つ分くらい違うのではないだろうか。
私の覚えている範囲では、東京では一番星とか夏の大三角くらいしか見えなかった覚えがある。
やはり都会は明るすぎたのだ。
そんな都会に慣れすぎたせいか、こちらの世界に来てすぐの頃は夜の暗さがとても怖かった。
街灯がないところを歩けば、月明かりに少しだけ照らされた路面が見えるだけ。
他は真っ暗。
煌煌ときらめくあのネオンや、ビルの明かり、まばゆい車のライトが一切ない世界なのだ。
いつもは鬱陶しく感じるそれらも、その時だけは寂しく感じた
この世界の明かりはロウソクを灯したランプだけ。
電気など存在しない。
ロウソクの小さい光は、空まで照らさないのである。
「本当に綺麗……」
無意識にそんなことを呟く。
心のそこから出た紛うことなき本音。
二度と見ることができないと思っていた、あの時プラネタリウムで見た星空が、星の配置は違えど今目の前に広がっているのだ。
そんな状況に感動しない訳がないだろう。
しばらく眺め続けた。
「すぅ……」
ふと小さな寝息が聞こえた気がした。
ゴロリと体を向けてみると、トゥーナとレノが二人で抱き合って寝ていた。
「いつの間に……」
足元にあった掛け布団をそっと掛けてやる。
「おやすみ……二人とも」
そう言って二人の頭をそっと撫でると私は体を元の向きに戻した。
もう少しこの星空を見ていよう。
あの時の、小学生の時に見たプラネタリウムのことでも思い出しながら。




