第5話 トゥーナとお母さん
「トゥーナちゃん。今日から私はお母さん、かな」
私に飛びついてきたトゥーナちゃん。
私はトゥーナちゃんの頭を撫でた。するとトゥーナちゃんはこちらを見て
「うん。お姉さんはお母さんだよー!」
そう言った。
「それでね?トゥーナと一緒に家族で村を創ろう?」
「……」
あー……そう言えば最初はそういう話だったっけ?娘の事しか頭になかったな。
「……村か……」
私はトゥーナちゃんに聞こえないようボソリと呟いた。
今更断れないな。
この子は私が母親だから一緒に村が創りたいと言った。そしてこの子の母親ならば村を一緒に作らなければいけない。
そういう流れになっている。
村創りね……どうしようかな。
私は考えた。
考えて、考えて、考えた結果。
「そうだね……じゃあ、一緒に村、創っていこう?」
最初はあまり乗り気じゃなかったけどね。
私と村創りたいって言ってるし何せ私はこの子の母親だ。
娘の頼み事もなるべく断りたくない。
頼み事の規模が大きすぎるけど……
「ほんとー!?やったー!」
手を挙げて喜ぶ我が娘。
「でもね、私村なんか創った事ないし、よくわからないよ?大丈夫?そう簡単に作れるものでもなさそうだけど……」
「大丈夫だよー。トゥーナ創り方知ってるー!」
「なるほどそれなら大丈夫って、なんで知ってるの!?」
これは驚き。娘が村の作り方を知っていました。
10歳くらいの娘が村の創り方を知ってるって今の時代普通なの?
いや……でもまさかね。
「トゥーナねー?村の創り方知ってるんだよー?」
はい、どうやら知っているそうです。
そういう時代なんですね、今は。
いや、どういう時代なんですか。
頭の中で一人ツッコミをしてみた。
「……まぁいいや。なんか色々謎だけど……」
「?」
ん?という顔をしているトゥーナちゃん。
「大丈夫です気にしないで」
私はそういうとプイと顔を逸らした。
「あ、そう言えばさ」
ふと、あることを思い出した。
「トゥーナちゃん。なんか呼んで欲しい呼び方とかある?」
名前の呼び方。家族だけど「ちゃん付け」というのはちょっと違和感がある。なのでトゥーナちゃんにも呼んで欲しい呼び方を聞いておこう。
こちらが勝手に決めて嫌な気持ちを持たれたら嫌だしね。
「トゥーナは別にどんな呼び方でもいいよー」
そうですか。
「じゃあ、まぁ私は母親らしくトゥーナって呼び捨てで。いい?」
「いいよー。じゃあトゥーナは……ううーんと……」
悩むトゥーナ。因みに早速呼び捨てでいかせてもらいます。
「ええーと……お母さんだから……」
いや、自分で「お母さん」って言ってるからそれでいいじゃん。
「よし、決まった」
トゥーナはうんと頷きこちらを向いた。
「お母さん!」
一周回ってお母さん、か。
結局呼び方は変わっていないけど……
「よし……じゃあそう言うことで、改めてよろしくね?トゥーナ」
親だけどよろしくってどうかなと思ったけど、私としては初めまして、なのでいいかなと。
「うん!お母さん!一緒に村創りしていこーね!」
「そうだね、頑張ろう」
「うん!」
こうして異世界に飛ばされた私は早速娘ができ、その流れで村を創ることにしました。