第24話 光景
「なんか可愛い」
「たしかに」
娘二人が切り株のように並ぶ丸太を見てそう言った。
「おとぎ話に出てきそう」
「たしかに」
トゥーナはレノの方に顔を向け、よく聞こえるようにそう言った。
レノとトゥーナと三人で生活し始めて、もうそろそろ一ヶ月が経つ。
のだけど、たまに思うことがある。
本当にレノは耳が聞こえてないの?
特に違和感なく会話できてるし。
まあ、たまに肩にポンと手を置くと驚いているが。
耳が聞こえないということを感じさせないレノの振る舞い。
「レノもだいぶ慣れてきたね」
二人の座る丸太とは向かい側の丸太に腰掛けた。
ちょうど向かい合わせになる感じで。
「お母さんと姉さんがいやすい環境を作ってくれてるから……それに、話しかけてくれた時も口が読みやすい。ありがとう」
どこか照れ臭そうにレノがそう言った。
「いいんだよ!レノは大事な家族なんだからね!」
トゥーナがレノを抱き寄せた。
「姉さん……」
「二人が仲良くしてくれて私は嬉しいよ」
そんな仲睦まじい光景を傍観する私。
もし向こうの世界で結婚して子供が生まれたら、こんな光景を見ることができただろうか。
「どうだろうな……」
世の中何があるかわからない。
ないことを考えるのはやめよう。
私は今生きるこの世界を第一に楽しむ。
「さてお二人さん。そろそろ作業を再開しようか?」
その仲睦まじい光景を壊すのは寂しいが、今は家作りの途中。
休憩もほどほどにして作業をしなければ。
今日中には丸太の上に床材となる板を並べたい。
「はーい!」
「うん、がんばろ」
二人がひょこっと丸太から立ち上がった。
「さて、じゃあね、この板を丸太の上にのせて欲しい。それぞれ置く場所が決まってるから気をつけて」
私はトゥーナとレノに一枚の紙を渡した。
この紙は私が数日かけて書いた設計図。
適当な大きさにカットした床板をどの順番で、どこに置くかが書いてある。
家が正方形や長方形なら楽なのだけど、少し特殊な形をしているからね。
「板に番号が書いてあるから、紙の番号と同じところに置いてね」
「なるほど」
「間違えないようにしないと」
向きは一定なので、あとは置く場所だけを注意すればいい。
「と言うわけで、床張りの作業をやって行こう。何かあったら聞いてね」
「よーし、頑張ろう」
「間違えないように……間違えないように……」
各々が若い数字の板を持ち、我が家の床張り作業が開始した。




