第17話 本屋
「この石はここでいい?」
「これはここの置いておくねー」
「その石取れる?」
「ちょっと支えてー!」
賑やかな雰囲気の中、石積みの作業は着々と終わりに近づいていた。
あれから数日。
やっと石積みの作業が終わった。
「大変だったね」
「疲れた……」
「でもなんか楽しかった」
三人で積んだ石の上に腰掛ける。
「二人ともお疲れ様。二人のおかげでかなり早く終わったよ」
「ほんと?」
「よかった」
初めは一週間くらいを予定していたのだが、トゥーナとレノが思ったよりも頑張ってくれて、なんと四日で終わってしまったのである。
もしこのままいけば、家作り自体が早く作り終わってしまうかもしれない。
「このペース……はちょっと大変かもしれないけど、頑張ろう?」
私は両隣に座るトゥーナとレノにそう言った。
そして、
「二人が頑張ってくれると早く終わる……それはすごく助かる。でもね、やっぱり無理はしちゃいけないよ」
二人はコクリと頷いた。
「無理はしてないからねー」
「私もまだ大丈夫」
「そう?ならよかった」
今後も安全第一で作業をしていかなければいけない。
家がいくら綺麗に出来たとしても、自分自身が壊れてしまっては元も子もないのだ。
娘二人には無理をして欲しくない。
それが家を作る中での、私の一番の思いでもある。
「何か面白そうな本は……」
身長より遥かに高い本棚の前で、私は分厚い参考書のような本の背表紙に指を沿わせていた。
ここは村の本屋。
今日は気分転換アンド食料調達として、久々に村に来ていた。
生活をする上での必需品を全て揃い終え、少しの息抜きとして本屋に立ち寄っていたのである。
「これとかどうかな」
茶色の背表紙をした、これまた参考書のような分厚い本を引き抜く。
『テルン旅行記』
表紙に箔押しされた金色の文字でそう書いてあった。
「テルン旅行記……ここら辺も出てくるのかな」
テルン地方とは、ここら一体の事。
当然レーネ村もテルン地方の一部にある。
ポツリとそんなことを呟いた途端、
「お母さん、この本買って!」
「私もこの本欲しい……!」
娘たちが本棚の陰から、ひょっこりと顔を覗かせた。
二人共、手には一冊の本を持っていた。
私はその本を見るなり、
「欲しいの?買うの?私が?」
二人の持っていた本を見せてもらう。
トゥーナが持っていた本は、
『オルシャーキノコ大全』
「……」
なんというか、言葉を失った。
この子はそんなにキノコが好きなんだなって。
「れ、レノは……」
トゥーナの持っていた本に未だ圧倒されながら、レノの本の題名を見る。
『サラン物語』
なんか安心した。
私はホッと一息つくと、
「二人はこの本が欲しいの?」
もう一回聞いた。
「うん」
「欲しい」
コクリと頷く二人。
キラッキラな目で見られてもなぁ。
欲しいものをなんでもかんでも買っていたら、将来的にいろいろ問題があると思うんだよね、私は。
という事で、
「買ってくるよ」
自分の『テルン旅行記』も持って会計に向かった。
「ありがとう、お母さん!」
「大切にする……!」
会計を済ませた本をそれぞれに手渡すと、飛び切りの笑顔で喜んでくれた。
この子たちのこの笑顔が見れるならいいか。
親バカだなぁ、などと心の片隅で思いつつ本屋を後にした。
本屋を出ると私たちは食堂で夕飯を食べ、帰路に着いた。




