第13話 髪飾り
「レノ、この花綺麗じゃない?」
トゥーナが一輪の花を摘むと、レノの肩をポンポンと叩き、振り向いたレノに見せた。
「あ……綺麗な花ですね」
レノが花を見つめる。
「お母さんにあげようかな」
「よろこぶと思いますよ」
レノの言葉を聞いてトゥーナは服の胸ポケットに摘んだ花を挿し入れた。
「そう言えばさ、レノはどうしてお母さんのことをユイさんって呼ぶの?」
トゥーナは首を傾げた。
「……なんででしょうかね……」
「それに敬語だし」
「……あ」
今気付いたを言わんばかりの顔をするレノ。
「トゥーナとレノは家族なんだから、敬語はいらないよー。それにお母さんのことはお母さんって呼んでいいし、トゥーナのこともトゥーナって呼んでくれたらいいからね」
トゥーナがそう言うとレノは、
「でもやっぱり、家族とは言っても……その、本当にお母さんと呼んでいいのでしょうか?私は……」
俯き言葉を詰まらせるレノ。
「レノは、なんて呼びたいの?」
レノの肩に手を置く。
「お母さんのこと、本当はなんて呼びたいの?」
トゥーナが優しく問う。
「私は……」
「レノも本当はお母さんって呼びたいんじゃない?」
「……」
トゥーナの言葉にレノは固まった。
「レノもお母さんって呼んで、お母さんに返事をしてもらいたいんじゃない?」
「……」
「お母さんって呼べる人が本当は欲しいんでしょ?でも、ちょっと自分から諦めちゃってる。違う?」
「……」
無言のレノ。
トゥーナもそんなレノを見つめて、口を閉じる。
そしてしばらくすると、
「私も……お母さんと呼んでいいのでしょうか?」
ポツリとそんなことを呟いた。
「……もちろんだよ。だって家族なんだもん」
「家族……」
小さく呟く。
「お母さんって呼んでみます」
レノの言葉にトゥーナは、コクリと頷いた。
「それとさ……」
「ふあぁぁ……」
目が覚めた。
お腹が減ってきた。
「寝てしまったか……」
そう言ってムクリと体を起こすと、辺りを見回した。
トゥーナとレノの姿はない。
太陽はちょうど頭の上を通り越した頃。
「そろそろお昼ご飯かな」
揃えて置いてあった靴を履き、もう一度辺りを見回す。
「あ、いたいた」
丘を少し下ったところにトゥーナとレノがいた。
私はそちらに向かって歩いて行く。
「トゥーナ、レノ。いいお花採れた?」
花を探す二人にそう話し掛ける。
「あ、お母さん!この花見て!」
すると、トゥーナが胸ポケットから一輪に花を取り出した。
「綺麗な花だね」
「お母さんにあげる!」
花を差し出すトゥーナ。
「くれるの?」
そう聞くと、
「うん!あげる!」
元気な返事が返ってきた。
「ありがとう、トゥーナ」
私はお礼を言うと、付けていた髪飾りを外しそこに挿した。
「どうかな?」
トゥーナにそう問う。
「似合ってるよ!あ、お母さん。ちょっと待って」
「ん?どうしたの?」
髪飾りを戻そうとしたら、トゥーナに止められた。
「ほらレノも、いいから、ね」
レノも花を持っているようだった。
が、なにやら恥ずかしそうにしている。
「レノも何かくれるの?」
レノがこちらを向いたのでそう聞く。
すると、
「お、お母さん!」
お母さんと呼ばれた。
「……ん?なに?」
一瞬驚いた。
いつもレノは私のことを名前で呼んでいたのに。
「お母さんにこれあげる……!」
レノが頬を赤らめ青色の小さく綺麗な花を差し出した。
「レノも……くれるの?」
「うん、お母さんにあげる」
「ありがとう」
早速レノからもらった花も髪飾りに付ける。
「どう?」
もう一度聞く。
「……いいと思いま……じゃなくて……いいと思う、よ……」
横を見ると、微笑むトゥーナと目が合った。
なるほどな、と全てを理解した気がした。
「そう言うことね?トゥーナ」
「うん、そう言うこと」
トゥーナの返事に私は頷いた。
「レノもありがとう」
「……うん」
小さな返事が返ってきた




