第3話 お母さん
足場のおぼつかない道を歩くこと10分。やっと開けた場所に出た。
「どう?お姉さん。この景色」
先に着いたトゥーナちゃんが振り向いた。
「どれどれー?」
トゥーナちゃんの隣の並ぶと、
「うわーぉ!」
目の前に広がる風景。
それはまだに私が長年待ち望んでいた田舎の景色に似ていた。
緑豊かな森に囲まれて、遠くには雪をうっすらと被った山々。草の生い茂る野原を流れる一筋の小川。
まさに田舎。私の想像とほぼ同じ光景。
「わぁー……」
それ以上の言葉が出ないくらい、その景色に見とれてしまう」
「どう?お姉さん。気に入った?」
あの景色に見とれる私の横で、私と同じように見とれているトゥーナが視線を変えずに問うてきた。
「もう……完璧」
文句なし。できることなら今すぐ住みたいくらい。
「じゃあトゥーナと一緒に村を創る?」
うーん。
でもそれとこれは別なんだよなー。
確かに景色は気に入った。ここに住みたいとも思った。
が、やっぱり村創りは別の話。
ただ住むのはいいかもしれない。自足自給でのんびりと生活。
でも村創りはな……
「うーん……」
「?」
私の発言に「ん?」という顔をするトゥーナ。
「お姉さん、私と一緒に村創らないのー?」
少し悲しそうな顔をしてしまった。
やめておくれよ。そう悲しい顔をするのは。
「あーっと……私と一緒に村創りたいの?」
悲しませないようになるべく優しく聞く。
「うん。トゥーナ、お姉さんと一緒に村創りたい。」
そうか。やっぱりそうだよな。
私も創りたくないといえば嘘になる。私だって正直創りたい。
でも、村を創った事など当然ない。
そんな未経験者が、少女と一緒に村創り。
大丈夫なのだろうか?
わからないことだらけじゃないか?
色々と心配なことが出てくる。
その前になぜこの少女は私と創りたがるのか?
そこも謎だ。
次から次へと浮かんでくる問題。
「あのさ、トゥーナちゃん。一つ質問なんだけど、なんで私と創りたいの?私以外の人じゃダメなの?」
するとトゥーナちゃんの顔がさらに悲しそうになった。
「えっ……」
目尻に浮かぶ涙がいまにも溢れそうな状態。
「あっ、泣かないで!ごめんね?なんか変なこと言った?」
目線を合わせるためにしゃがむ。
「んん、大丈夫」
プルプルと首を振るトゥーナちゃん。
「あのさ、一つ質問いいかな?」
そう聞くとトゥーナちゃんはコクリと頷いた。
「どうして私がいいのかな?」
すると、トゥーナちゃんは私の目とじっと見つめると
「だって、お姉さんはトゥーナのお母さんだもん!」
そう言った。