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第5話 トナカイのように

「レノ、ですか?」

「うん、レノ」

 目の前に座る少女は目を閉じた。

「……どう、かな」


 ハンガーに掛かっている白いローブを見て思いついた。

 ローブの裾のところにトナカイの刺繍が施してある。

 スペイン語でトナカイは『レノ』。

 生前、スペインにいた中学校時代の友人から毎年届くクリスマスカードに、そう書いてあったのを思い出したのである。

 それに、たくさんの夢を運ぶサンタクロースを導くのはトナカイの役目。

 将来、たくさんの人の夢を導いてあげてほしい。

 そういう思いで付けた。


 なんか本当の名付け親のようだな。

 それくらい真剣に名前を考えた。

 それでも、名前に込めた思いは本物。

 この子にはたくさんの人を導いてほしい。

 あと、本当の名前をいつか聞いてみたい。


「いいですね、レノ。私はいいと思います」

「本当?」

「はい」

 嬉しそうにコクリと頷く。

「トゥーナもいいと思う!」

 そうか。

 それは良かった。

 気に入ってもらえたようだ。

「それじゃあ、今日から貴女はレノ。私は仮の名前だと思って呼ぶことはしないから、覚えておいて。本当の名前を思い出すまでは、これが貴女の本当の名前だから」

「はい……!」

 レノの笑みがこぼれた。


「レノか……ふふっ、レーノ」

 自分に名前を呼び続けるレノ。

 それほど嬉しかったのだろうか?

 そんなに喜ぶレノをみていると、こっちまで嬉しくなってきてしまう。

 それに、

「レノ!外行こう!」

 トゥーナも早速仲良くなってる。

 二人にはどこか似ているところがあるし、気でも合うのだろうか?

「ト、トゥーナさん、早いです。ちょっと待って……!」

「お母さん!裏の川行ってくる!」

 玄関の方からそう聞こえてきた。

「はーい、レノも一緒?」

「そーだよー!」

 私は飲み終えた紅茶のカップを洗い終え玄関に向かった。

「気をつけてね、トゥーナもレノも」

「はーい!」

「わ、わかりました……!」

 私は、仲良く手を繋いで小川に向かう二人の姿をいつまでも見守っていた。


「それで……これからどうするの?」

 レノも交えた夕飯の時、ふと私はそう聞いてみた。

 森で倒れていて、記憶が無くて。

 どうするのだろうか。

「そうですね、確かに困りました……」

 レノはうーんと考え始めた。

 私はこの時を待っていたと言わんばかりに、ある言葉を発した。


「じゃあさ、この家に住まない?」


 名前を決めた時にふと、こう思った。

 この子とトゥーナと3人で住めたらどれだけ楽しいだろうか。

 この子と家族になれたらどれだけと楽しいだろうか。

 私の我が儘な空想かもしれないけど、やっぱりこの子と一緒に日常を送ってみたい。

 これもきっと、何かの縁があったからこその出来事なのであろう。


 机に向かって「どうしようかな」と話しかけているレノ。

「ね、レノ。もし行くあてがないのなら、うちで一緒に暮らさない?」

 私はもう一度レノにそう聞いた。

 しかし、

「ん?レノ?」

 レノが返事をしない。

 おかしいな。

「レノー」

 もう一度呼んでみる。

 すると、

「どうしようかな……ん?あ、ごめんなさい。なんでしょうか?」

 ジッと見つめていたら気づいてくれた。

 一瞬無視でもされたのかと思ってしまった。

「それでさ、これからどうするの?行く当てとか……ある?」

「行く当て……ですか……特にないですね……まず何で森のいたかもわからないので……」

「そうだよね」

 行く当てなし、か……

 でも、それなら。


「もしよければ、だけどさ。うちで一緒に暮らさない?」


 私はレノの目を見つめて、静かにそう言った。

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