第4話 名前
「ごめんね?勝手に連れて来ちゃって」
「大丈夫です……ありがとうございました」
テーブルの向かいに座っているのは白い髪をした少女。
そう、森で見つけたあの子である。
「ね、自己紹介しよう。私はユイ。この子はトゥーナ。私の娘だよ」
「よろしくー」
トゥーナがヒラヒラと手を振った。
「あ……私の番ですね。私は……私の名前は……」
少女が首を傾げた。
「ん?」
「名前……あれ……?私の名前……ええと……え……名前……?名前は……わからな……名、前……?うう……」
急に目の前の少女が頭を押さえ始めた。
「ん?大丈夫?」
私はそう声を掛けた。
「私の……私の名前は……私の、名前?私の……」
頭を押さえたまま俯く少女。
「私の名前は……うう……頭が痛い……う……」
「ちょ、本当に大丈夫!?」
机に伏せてしまった。
「この子……記憶がないの……?」
トゥーナが心配そうな顔でこちらを見てくる。
「そうなのかな……ね、本当に大丈夫?」
私は席を立つと、少女の方に向かった。
「頭が……うう……名前……頭が……痛……」
頭を抱える少女。
「大丈夫?そう無理しないで」
私は少女の隣の席に座ると、背中を撫でた。
しばらくして、
「すみません……ありがとうございます」
少女が顔を上げた。
「大丈夫?」
「はい、もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」
ぺこりと頭を下げる少女。
「よかった……あ、ちょっと待ってて。お茶淹れてくるから」
「あ、大丈夫です。お構いなく」
「いいよいいよ、お茶飲んでゆっくりして行って」
エプロンを着てキッチンへ向かう。
出すお茶は……紅茶でいいかな。
「おまたせー」
私はトレーに載せたカップをトゥーナと少女の前に置いた。
「ありがとー」
「あ、ありがとうございます」
私も席に着き、お茶を一口飲んだ。
そんな私を見て少女も遠慮がちにカップに口をつける。
「おいしい……」
「温まる……」
「おいしいですね……」
さてさて、お茶も飲んだことだし、
「少し、話を聞かせてくれる?無理のない範囲で」
私がそう聞くと、少女はコクリと頷いた。
「じゃあ、何で森で倒れてたかわかる?」
最初の質問。
これが一番きになるか
この子が倒れていた森なんて滅多に人が入るところでもないし、子供一人でなんて、尚更だ。
隣に座るトゥーナも、うんうんと頷いている。
すると少女が口を開いた。
「……えっと……わかりません。気が付いたらこの家にいました……すみません」
申し訳なさそうに言う。
「そうか……何で森にいたのかもわからないのか……ん?そういえば何でユーナはこの子が森で倒れてることがわかったんだ?」
なぜだろう。
「確かに……何でだろう」
トゥーナも首を傾げる。
「まあ、そのことは後で考えるとして。貴女……ってなんか呼びにくいな……あのさ、仮でいいから何か名前つけてもいい?」
少女の方を見てそう問う。
「仮の名前ですか……わかりました。それなら、何かいい名前をつけてください……!」
少女の目がキラキラ光っていた。
「そうか……名前ね……うーむ……」
考える。
下手な名前はつけられないしな。
たとえ仮だとしても、私もトゥーナもあの子も納得できる、可愛い名前をつけないとな。
「じゃあね……」
「うんうん!」
「なんでしょうか……!」
決めた。
この名前にしよう。
「レノ、なんてどう?」




