第20話 雨
「なんか雨降ってきそう」
「ほんとだねー」
雲行きが怪しくなってきた。
西の空が黒い雲に覆われていく。
「雨降る?」
トゥーナが首を傾げている。
「どうだろうな……こっちに雲が向かって来てる気もするし……家に戻ろうか」
私はそう言うと、家へ向かった。
「ほら、トゥーナ。ユーナも連れてきて」
「はーい!」
トゥーナにユーナを任せると、私は外のテーブルに置いてあった家の設計図やら、パンやら、本やら……
色々なものを抱えて家に入った。
「ほーら、トゥーナ」
未だにユーナを外にいるトゥーナ。
私は黒い雲をジッと見つめているトゥーナの背中をポンと押し、家に入るよう促す。
トゥーナはコクリと頷くと、
「ユーナ、行こ」
トゥーナは丸太の上で森を見つめているユーナに手を伸ばした。
しかし、
「ユーナ」
トゥーナが何度呼びかけても、ユーナは森の方を向いたまま。
「ユーナ、雨降ってきちゃうよー、戻ろうよー」
トゥーナが何度もそう呼びかけるが、ユーナは振り返りもしない。
「ほら、ユーナ、戻ろう」
私がユーナを丸太から持ち上げると、やっとユーナはこちらを向いた。
「森に何かあった?これから雨が降るから家に戻ろうねー」
私は、トゥーナとユーナと一緒に家へ入っていった。
それから間も無くして、雨が降ってきた。
バケツをひっくり返した様な激しい雨だ。
「凄い雨だなぁ……」
家の屋根を容赦なく雨粒が叩く。
「家、大丈夫?」
向かい側の椅子に座っているトゥーナが心配そうな顔で問うてきた。
「これくらいなら大丈夫だよ。雪は怖いけど」
私は読んでいた本を閉じるとそう答えた。
ちなみに今のところ雨漏りもはない。
仮で作った家でもしっかりと雨風から守ってくれていた。
有難や有難や。
「この雨、止むかな……?」
もう直ぐ夕方。
降り始めて大体1時間くらい経った。
いつもならこの時間は、夕日が遠くに見える山々の稜線に沈みかけている頃である。
しかし今日は、その山々も黒い雲と、激しい雨の覆われて見えない。
もう既に辺りは暗くなってくている。
勢いをさらに増す雨。
なかなか止む気配を見せない。
それでも私は、
「明日には止んでるよ、だから安心して……」
雨は止むと思う。
私はトゥーナに向かってそう言うと、再び本を開いた。
「……うう……頭……痛い……」
雲行きが怪しくなって来た頃。
薄暗い森の中、一人の少女が大きな切り株に腰を下ろしていた。
白いローブを身に纏い、フードの合間から白い髪が揺れる。
その少女は頭を抱えていた。
「あっ……痛、い……頭が……うぅ……」
少女はフードをギュッと握ると、パタリと切り株の上に倒れた。
直後、その少女を濡らすように降ってくる雨。
勢いを増して行く雨は、少女の服を徐々に濡らしていった。




