第18話 既読のつかないメッセージ
カチャリ
乾いた音が辺りに響き渡った。
鍵をカバンにしまい、ドアノブに手をかける。
その際に、ドア横のポストを一瞥。
妃
そう書かれた表札が掛かっていた。
ドアノブを回し戸を開ける。
「お邪魔します……」
中から返事はない。
そのまま玄関で靴を脱ぎ、家に上がった。
廊下を進んで、突き当たりのドアをスライドさせる。
「……さて……」
床に持っていたカバンを置くと、まずは窓に向かった。
カーテンを開け、窓の鍵を外す。
カラカラと音を立てて窓が開いた。
都会の太陽の光が部屋を明るく照らす。
どこまでも青い空にポッカリと浮かぶ雲が見えた。
カーテンを揺らすのは心地よい風だ。
しばらく窓の外を眺めると振り返り、部屋を一瞥した。
そこで目を閉じ、
「結衣」
この部屋の主の名を呼んだ。
「……」
しかし、いつまで待っても返事は返ってこない。
深雪はスマホを取り出すと、トークアプリを開いた。
そして一番上にある
『結衣』
と書かれたルームをタップ。
画面には、黄緑色の吹き出しが並んでいた。
13:09 「今から行くね〜」
13:24 「少し遅くなりそう...ごめんね」
13:45 「もう着くよ」
送信時間を示す数字の上には何も付いていない。
深雪はそこに、
14:00 「着いたよ(*・ω・)ノ」
新たなメッセージを載せた。
「……」
やはりつかない既読。
深雪は無言でスマホの画面をスクロールして行く。
「……」
どこまで遡っただろうか。
ふと、白い吹き出しが現れた。
18:36 「駅すごい混んでる〜」
大学の帰りに結衣が送ってきたメッセージだ。
最後の白い吹き出し。
ここから下には、黄緑色の吹き出しが続いている。
深雪は最後の白い吹き出しを眺め、さらに上にスクロールする。
「……」
次々と表れる白と黄緑色の吹き出し。
親指を使って過去に遡る。
そこでふと指の動きが止まった。
ある写真の上で。
笑顔で並ぶ結衣と深雪。
大学の休日を利用して二人で出かけた時のもの。
場所は確か……
「会津若松……」
二人の背後に写る、白い壁の城。
鶴ヶ城だっただろうか。
仲良く一つのフレームに写る二人を見下ろしていた。
さらにトークを上へ動かす。
白い吹き出しに黄緑色の吹き出し。
その二つが交錯する中で、また写真を見つけた。
「結衣……」
深雪はその写真を見て、ボソリと隣に写っている最愛の友人の名を呼んだ。




