第14話 迷子発見
「……あれ?トゥーナ、まだ帰ってこないの?」
夕陽が遠くの山の稜線に沈みかけた頃、私はふとトゥーナのことを思い出した。
「トゥーナ!」
ソファの上からトゥーナを呼んでみる。
広くない家なので、ここから呼べば家中どこにいても声は聞こえるはず。
「……」
しかし返事はない。
「家にはいない?」
まさかそんなことが?
夕陽が沈む頃には帰って来なさいよ、って毎回言っていたはずなのだけど……
「トゥーナ!トゥーナ!」
ソファから立ち上がり家の中を捜す。
「……」
返事なし。
「うっそ、まだ帰ってくてない!?」
私は机に置いてあったランプに火をつけて家を飛び出した。
「トゥーナ!いる!?」
ランプ片手に森の中をウロウロをする。
森に行ってくると言って家を出て行ったけど、まさかまだ森を出てない?
夜になると子供一人では逃げ切ることができない動物も現れる。
「どこだー……」
ランプを左右にかざし薄暗い森を照らしていく。
「いないぞ……」
そんなに奥へは入っていないはず。
キノコを採ったところもそんなに奥ではなかったし。
一通りいそうなところを捜してみた。
さっきキノコを採ったところだとか、木を切り出したところとか。
それでもトゥーナはいなかった。
それほど捜してもいないとすれば……
「……まさか!」
私の脳内を最悪な考えが横切った。
「迷子!?」
森の中で迷子。
もしかすると、暗くなって来たので帰ろうと思ったら反対の方向へ向かってしまい、気がつけば全く知らないところにいた。
そんなことになってしまったのかもしれない。
「それだけはやめてよ……」
そんな考えを否定しながら私はさらに森の奥へと進んで行った。
トゥーナを捜査すること30分ほど。
今までの探索地点ギリギリのところまで来てしまった。
「トゥーナ!どこかにいる!?返事して!」
私はもう一度声を出す。
そして耳を澄ませる。
すると、その声に反応するようにどこからか木を踏んだような音が聞こえた。
「トゥーナ!?」
私は音のした方に走った。
ランプをかざし走る。
「トゥーナ!いるの!?」
木の根を飛び越えて、茂みをくぐる
するとややひらけた場所についた。
「トゥーナ?」
ランプでぐるりと照らす。
「お母さん!」
聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
「トゥーナ!?」
私が声の主を探そうと首を振った瞬間、後ろからドンと衝撃が走った。
「おおう……」
「お母さん!お母さん!」
トゥーナだった。
背中に顔を押し付けギュッと抱きしめてくる。
「トゥーナ!?どこ行ってたの?心配したんだよ!?」
「ごめんなさい……ごめんなさい……ううぅ……」
私の背中に向かって謝るトゥーナを、よいしょと抱きしめると、
「ううぅ……グス……うわぁぁぁぁん……!」
大声で泣き出してしまった。
「ほらほら泣かない泣かない。お母さんが来たから」
よしよし、と背中を撫でる。
「ごめんなさい……」
微かな声でそう謝るトゥーナ。
「大丈夫だよ。しっかり迎えに来たんだし、涙拭きな」
私はポケットからハンカチを取り出すとトゥーナの涙を拭った。
「お母さんに会えて……よかった……」
首に手を回してしがみつく我が子。
「じゃあ帰ろうか」
私は泣きじゃくる我が子の背中をさすりながら家へと向かった。




