第13話 真っ暗な森
森に到着しました。
一人で来ると心なしかいつもより暗く見えます。
少し怖いです。
いつもはお母さんと一緒だから。
でも今はいません。
「よし……入ろう」
カゴの持ち手をぐっと握り締め、私は森に入って行きました。
「……うぅ……」
パキパキと小枝を踏みしめる音が静かな森に響き渡ります。
左右に首を動かし目的のキノコを探して行きます。
「茶色のキノコ……」
解毒剤になるキノコは茶色をしています。
しかしこのキノコは小さいため、地面と同化してしまっていてとても探すのが大変。
立っていても見つからないので、しゃがんで探すことにしました。
地面に手をつきながら茶色の解毒剤キノコを探します。
「どこ……」
先程採りに来た時はたくさん見つかったのに、今はなかなか見つかりません。
それからどのくらい時間が経ったでしょう。
やっと一つ見つけました。
それはとてもとても小さなキノコでした。
「よかった……」
小さくても解毒はできます。
これで解毒剤が作れるはずです。
私はカゴにそのキノコを入れると、近くの切り株に腰掛けました。
辺りを見回すと薄暗い森が四方に続いています。
吸い込まれそうなほどに暗い森です。
そこに入って行ったらもう戻れなくなってしまうような……
そんな気がしました。
上を見上げると、青い空が広がっています。
雲ひとつない快晴。
晴れ晴れとした空です。
鳥が飛んでいました。
二羽の鳥が仲良く並んで飛んでいます。
それはとても優雅に、のんびりと。
広い空で誰にも邪魔されずに。
そんな自然の風景を見ていると眠くなって来てしまいました。
瞼が落ちて来そうです。
……ああ、ダメ。ここで寝たら。帰って早く解毒剤を作らないと……
自分にそう言い聞かせましたが、自然の摂理には逆らえませんでした。
「……ん?」
ひゅおうと吹き抜けた肌を刺すような風で目を覚ましました。
「あ……」
そこで今まで自分は寝ていたこと、自分の周りが暗くなっていることに気づきました。
どうやらもう夕方のようです。
「早く帰らないと……!」
カゴを手に持って私は急いで立ち上がります。
しかし、辺りは薄暗くなっています。
自分がどこから来たかわからなくなってしまいました。
ぐるりと一回転して自分が来た道を探します。
でも、薄暗い森はどこも同じような風景。
見当がつきません。
「どうしよう……」
いよいよ大変なことになって来ました。
夜の森はとても危険だと前にお母さんから聞いたことがありました。
―夜、森で動物に襲われたらトゥーナ一人では逃げ切れないよ―
お母さんの言葉が脳裏を横切りました。
夜の森には人を襲う動物がいるそう。
『私一人では逃げ切ることができない』とお母さんは言いました。
「早く道を見つけないと……!」
動物に遭遇せずになるべく早く帰ろうと私は、カゴを持ってウロウロしました。
あっちに行って、こっちに行って……
右往左往した挙句、完全にわからなくなってしまいました。
「お家どこぉ……」
涙が頬を伝って行きました。
その涙はどんどん溢れて来ます。
一向に止まる気配を見せません。
「うう……お母さん……お家、わからないよ……助けて……お母さん……」
切り株に再び腰掛け、私は組んだ腕に顔を埋めました。
辺りはさらに暗くなって来ます。
もう夕日も沈みそうです。
木に邪魔され陽の光が全く刺さない森はどんどん暗くなって行きます。
「助け……て……」
服の袖を涙に濡らしながら私はなぜこのようなことになったのかを考え始めました。
元はと言えば、キノコを間違えて持って帰って来た自分が悪いのです。
何をどう責めようが自分のせい。
自分のしたことでお母さんが毒キノコを食べてしまった。
「トゥーナのせいか……」
さらに涙が溢れて来ました。
「……あれ……明るい……」
ふと気がつくと辺りが明るくなっていました。
先ほどまでは真っ暗だったのに。
「朝かな?」
顔を上げて周りを確認してみると、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきます。
―トゥーナ、こっちだよ。迎えに来たよ―
「あ……お母さん……?」
顔を上げるとそこは真っ暗な森の中でした。
どうやら寝ていたそうです。
湿った袖が冷えて冷たくなっていました。
「お母さん……」
どこかで声が聞こえた気がして目を覚ましました。
しかしその声の主はどこにもいません。
「あれ……」
切り株から立った途端、森の奥が急に明るくなりました。
そして、
「トゥーナ!どこかにいる!?返事して!」
「……!」
明るくなった森の方から声が聞こえて来ました。
その声を聞いて私は飛び上がりました。
だって、あの声は……
私のお母さんの声だったから!




