第10話 ヒューズドン
「まずは……」
私は手元の本を参考にしながら、地面の硬さを測るための道具を作り始めた。
「櫓を立てて……滑車を吊るす……よし、ここまではできた」
前もって家を建てる範囲に線を引き、その線の角に櫓を立てる。
どうやら、地盤調査というものは数カ所で測らないといけないらしい。
「あとは錘を吊り下げるだけと……」
私は地面に転がっている錘を見つめた。
「重いんだよなぁ……これ」
参考にしている本には『地盤調査をする際は、重い錘が必要である』と書かれていた。
そこで、森の中で拾ってきたかなり大きい石を使うことに。
見た目は小さいくせにこの石はかなり重たい。
できれば持ち上げたくない。
なるべく負担の少ない方法で。
「じゃあさ、先に石に縄を結んじゃおうか」
トゥーナにそう提案し、私は縄を持つ。
これなら楽にできる。
我ながら名案だ。
「結構頑丈に結んでおかないとな」
私はそう呟く。
途中で縄から外れて落ちてきたら大変だ。
確実に怪我をしてしまう。
「これでいいかな」
縦横何重にもぐるぐると巻きつけ、ひとまず錘の準備はできた。
「この縄を滑車にかける」
石に巻かれている方とは反対側の縄を滑車に引っ掛けた。
「大丈夫かな……」
果たしてこの櫓はこの石の重さに耐えられるだろうか?
かなり太めの木を使ってはいるが、やはり心配だ。
因みに滑車はかなり奮発して、定滑車と動滑車のあるものにした。
これで私でもトゥーナでも楽にこの石を持ち上げるはずだ。
「お母さん!トゥーナ引っ張る!」
しゃがんで見ていたトゥーナが急に立ち上がりそう言った。
「トゥーナが引っ張る?」
私がそう聞き返すと、
「うん!」
トゥーナは頭の上のユーナが危うくを落ちそうになるくらいの勢いで頷いた。
「じゃあ、私がいいよって言ったら引っ張ってね」
そう指示をして、私は硬めの木を持ってきた。
「トゥーナ、一回持ち上げてー」
「はーい!」
元気な返事が帰ってきた。
と、同時にググッと持ち上がる錘。
「上がったー!」
錘が上がったことが嬉しかったのか、トゥーナが急に縄を手放した。
ヒュンッ!!
物凄い勢いで私の鼻先を通り抜ける石。
ドシャッ!!
土を跳ねあげて大胆に着地をする錘。
「……」
鼻先を削られそうになって固まる私。
「……」
縄から手を離してしまい固まるトゥーナ。
「ぁ……」
「……」
「お、お母さん?大丈夫?」
「……ふう、危なかった」
自分で鼻の頭をさすり、怪我をしていないかを確かめる。
「ごめんなさい!」
風切音がしそうなくらいな速さで頭を下げるトゥーナ。
因みにユーナはあらかじめ私の頭に飛び移ってきていた。
「気をつけてよ?私の鼻がなくなるよ?」
穏やかな口調でそういう私。
なぜか今は不思議と気持ちが落ち着いていた。
なぜだろうか?
「ごめんなさい、お母さん」
もう一度頭を下げるトゥーナ。
「気を付けてね」
私はそれだけを言うと、
「さ、トゥーナ。もう一回持ち上げて。今度は手を離さないように」
「り、了解です」
緊張した面持ちで再び縄を握るトゥーナ。
「ほらほら、もっと楽しくやろうよ。楽しく」
トゥーナに向かって微笑みかける。
「う、うん」
いつもと違う様子の私に少し怯えている様子のトゥーナ。
しかし、その時私はそんなことに全く気がついていなかった。




