第6話 自然
後ろから前へ、後ろから前へ……
どのくらい繰り返しただろうか。
運ぶのは巨木。
先人の知恵を生かし、運んで行く。
「これで全部かな?」
ズラッと並べられた巨木を見て、私はそう言った。
森から運ぶこと十数本。
やっと現段階で切り倒した巨木を運び終わった。
「疲れたー」
トゥーナは倒れている巨木の上に腰を掛ける。
「お疲れ、ちょっと休もうか」
「ふぅ……」
二人で隣り合って腰掛ける。
私は無言で空を見上げた。
雲ひとつない青空が一面に広がる。
どこまでも続く青い空。
その空に終わりはない。
顔を少しづつ下げて行くと青々とした碧に覆われた山々。
ひとつで背の高い山は頭に白く雪を被っている。
秋になると、紅葉も観れるのだろうか。
想像するだけで楽しみである。
さらに顔を下げる。
すると今度は、透き通った水がそよそよを流れる小さな小川。
都会の川とはかけ離れた透明度。
川底が見える。
悠々と泳ぐ魚が見える。
石にうっすらと生える川藻がゆらゆらと揺れる。
私が望んだ世界。
自然に囲まれる、この世の中の本当の場所。
元の姿。
太古の世界は、半永久的に生え続ける草木があたりを覆う。
自然にまみれた世界。
しかし、そんな世界は今、消え去りつつある。
生え続けるのは鉄筋の樹木。
何処を見渡しても灰色の森が続くのみ。
天を衝く槍があたりに林立している。
自然に囲まれたここは、私にとってとても居心地のいい場所に思えた。
「ね、トゥーナ……」
ふと、トゥーナに話しかける。
「何?お母さん」
こちらに顔を向けるトゥーナ。
「私ね……ここが好き」
私はそっとそう呟いた。
私の本音。
「トゥーナも……ここは好き。うん、大好き」
顔を正面に戻し、辺りをぐるりと見渡すと、トゥーナはそう言った。
それから数時間。
更に木を切り倒して、更に木を運んで。
繰り返すこと……わからない。
たくさん繰り返した。
二人は切り倒した数を忘れるほど、熱中していた。
仮住居の前には、切り倒された巨木が列になって並ぶ。
見たこともない光景に、私は思わず笑みが漏れた。




