第5話 自分の手で
「軽い木だから……大人一人でも持てる……」
は……?
「は……?」
私はトゥーナのその言葉に愕然とした。
「なにそれ……もっと早く言ってよ……ねぇ……今までの時間完全に無駄だったじゃん……どうするの……そのこともっと早くわかってたら更に作業進んでたよね……なんだったんだろ一体……はぁぁ……」
心の声が漏れ出た。
多分今の私の顔、物凄いことになってると思う。
目を見開いて、一点を見つめてる。
そんな感じがする……
「ひぇぇぇ……ご、ごめんなさいぃぃ……お母さんんん……」
そんな私を見てか、トゥーナが震えている。
にも関わらず私は、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……何やってるんだろ私……木の種類くらい最初から聞いておけよって……はぁぁぁぁ……」
ブツブツ独り言タイム。
「お……お母……さん……?ごめんね……トゥーナのせいで……」
トゥーナの目尻に涙がたまりかけたその時、フッと我に帰った。
「……なんか危なかった気が……ん?トゥーナ?どうしたの?」
トゥーナがいまにも涙を流しそうな顔をしている。
「ごめんなさい……お母さん……」
ヤバ……
「……ああと……トゥーナは悪くないから泣くのはやめて……」
なんかごめんねトゥーナ。
私がトゥーナの涙を拭ってやると、ガバッと抱きついてきた。
「おおと……」
後ろに倒れそうになったがなんとか耐える。
「お母さん……」
胸に顔を埋め、トゥーナが私を呼んだ。
「ごめんね、トゥーナ。さっきのはトゥーナのせいじゃない。気にしないで……」
そう言って頭を優しく撫でる。
「うん……」
トゥーナは私の胸の中で小さく頷いた。
それから数分後。
「じゃあ運ぼうか?」
「うん、運ぼ!」
復活したトゥーナと巨木を運ぶ準備。
いくらこの木が軽いからと言っても、別に一人で担いで行こうとは思わない。
ここは家族で協力して運ぶべきだ。
「よし、丸太を入れて……そうそう、そんな感じ」
私が巨木を持ち上げた隙にトゥーナが丸太を入れる。
それを繰り返していくこと十数回。
「よし、こんな感じかな」
巨木の下に丸太を入れ終わった。
これであとは押すだけ。
楽なもんだ。
まあ途中、丸太を後ろから前に持ってこないといけないが……
「じゃあ、トゥーナ動かして。私は丸太を移動させるから」
「わかったー!」
私は両手に丸太を持つ。
「じゃあ動かしまーす!」
「いいよー」
トゥーナがゆっくり巨木を動かし始めた。
「おおー!軽いー!」
先人の知恵とこの木の特性を生かした運搬方法。
日本にいたらこんなことは絶対にやらなかっただろうな。
そう思える。
第一向こうは重機があるし。
完全に機械化されていた。
そう考えると、これはかなり貴重な体験なんじゃないか?
なかなか木を転がして運ぶなんてしないぞ。
実際私これ初めてだし。
何だかんだでこれは成功した。
このまま残りの木も運んでいこう。
機会に頼らず、自分の手で。




