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第1話 ここから

 ―私、結衣の分まで生きるよ。元気に、さ。でも、楽しいこととか悲しいことは半分こ。ゆっくり二人で生きていこう?―


 ―うん……じゃあ私の残りは深雪に任せた。だから……しっかり生きてよ、私の分まで。笑顔でさ―


 ―うん……!―


 瞼の裏から感じる太陽の光と、誰かの声で目を覚ました。

「んん……深雪……?」

 聞こえてきた声……あの声は多分深雪の声だ。

「深雪……?居るの?深雪?」

 未だ覚醒しきっていない脳で首を懸命に動かし、辺りを見回した。

「あれ……」

 しかしいくら探しても深雪は何処にもいない。

 違う……ここに深雪は居ない。

 徐々に覚醒していく脳で自分の今いる場所を把握していく。

 ここは、二つ目の世界だ。

 生まれ変わった世界。

 そうだ、ここに深雪は居ないんだ。

 そこまで考えつくと、不意に右手の服の裾が引かれた。

「う……んん……」

 引かれた方に顔を向けると、トゥーナが寝返りを打とうとしていた。

 しかし私の服の袖を左手で握って居るためうまく転がれていない。

「ふぁぁ……」

 私は大きな欠伸をすると、トゥーナの左手をそっと開き、服の裾を放してやった。

 すると今度は、トゥーナは私の右手をギュッと握った。

 そして再び寝返りを打とうとする。

 それじゃあ裾話した意味ないじゃん……

 苦笑いする私。

 可愛いなぁ、娘って。

 何度かクイクイと右手を引くとトゥーナは諦めたように今度は逆向きに寝返りを打ってきた。

 目の前にトゥーナの顔がある。

「トゥーナ……」

 そっとその名前を呼ぶ。

「私は……友達を置いてきちゃった……いや、ええと……友達より先に来ちゃった……どうしよう」

 幼い寝顔を晒すトゥーナに私は静かに話しかける。

「でもね……私、その子と、約束したんだよ」

 左手でトゥーナの頬に触れた。

「私の分まで……しっかり生きてね……って」

 ここまで言うと頬を涙が伝うのがわかった。

 私は泣いている。

「笑顔で生きてねって言ったのに……私ばっかり泣いてちゃダメだよね……私も、笑ってなきゃ」

 私は隣で寝ているトゥーナのおでこにコツンと自分のおでこを軽く当てると、そのまま目をつぶった。

 目尻に溜まっていた涙が一気にあふれた。


「……お母さん……起きて……お母さん、朝だよ」

 今度は耳元ではっきりと声が聞こえた。

 トゥーナの声だ。

「起きてー」

 ユサユサと体が揺らされる。

「あうぅー……」

 もう少し……もう少しだけ寝たい……

 その思いも叶わず、

「起きるー!」

 バサっと掛け布団を取られてしまった。

「……うひゃ!」

 ベッドの上で大人気なく縮こまる私。

「朝だよー」

「……はーい……」

「起きてー」

「……はーい……」

 子供に起こされる母親。

 遂にここまで堕ちたか。

 まだ母親人生一週間だぞ。


 因みに今私たちが寝て居るのは、新居(仮)である。

 家を作るために仮の寝床として作った四畳ほどの小さな小屋。

 森で切り出した木で素人ながらに作った掘っ建て小屋。

 山村の畑の脇にある「ザ☆物置」って感じが物凄くするけど、案外居心地がいい。

 隙間風があまりなく(隙間に藁を詰めてるから)、雨漏りもしない(雨が降ってないだけ)。

 ここに住むこと四日、今は森で新居(こっちが本物)を建てるための木を切り出している。


「起ーきーて!」

「もう少しぃぃ」

 未だにベッドの上で言い合っているが、これは昨日も一昨日もそうだった。

 変な日課だな……

 そう思いつつも私は抵抗を続けた。

 すると、

「トゥーナ怒った!」

 そう宣言して、ポスっと私の上に飛び乗った。

「グホッ!」

 鳩尾にトゥーナの小さい足が刺さる。

「起きたー?」

「……起きます……」

 なんとなく身の危険を感じ私は遂にベッドから身を起こしたのであった。


 色々な出来事が日々あります。

 楽しいこともあれば楽しくないことも。

 それでも一日一日を大切にして。

 日々丁寧にいくて生きます。

 この先どうなることやら。

 予想もできない出来事が起こるこの世界。

 そんな世界で生きる毎日がとても楽しみです。

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