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第19話 受け入れ難い事実

「もしもし、由井です……どちら様でしょう?」

 ビルの隙間から朝日が昇り始めた頃、突如深雪のスマホが鳴った。

 枕元に置いてある筈のスマホを手探りで探し、顔の前に持ってくる。

 見知らぬ番号からの電話。

 ベッドの淵に座り恐る恐る電話に出てみると、

『朝早くのお電話お許しください。由井……深雪さんですね?』

「はい……そうですが……どちら様でしょう?」

 深雪は眉をひそめながら電話口の相手に問うた。

『失礼致しました。私、結衣の母親の舞衣を申します』

「あ、おはようございます。いつも結衣にお世話になってます」

 深雪は電話越しにぺこりとお辞儀した。

「それで、どうしたんですか?」

 何気なく深雪がそう問うと結衣の母親は言葉を詰まらせた。

『あ……』

「どうしました?」

『……』

「……」

 しばらく沈黙が続いた。

 お互いに声を出さず、数分。

 ふと、電話口から女性のすすり泣く声が聞こえてきた。

「どうしました?大丈夫ですか?」

 深雪がそう言うと、向こう側からガサゴソと音がした。

 かと思うと、別の声の主が現れた。

『舞衣が失礼しました。電話変わりまして私は結衣の父親、結隆と申します』

「あ、お世話になってます。由井です」

 反射的にそう挨拶をした。

『ご丁寧にありがとうございます。……由井さんは結衣の大学のご友人でいらっしゃいますか?』

「ええ、そうです……よ?」

『これからの内容はあなたにとって少し辛いことかもしれません。大丈夫でしょうか?』

 何のことだろう。

 深雪は少し不思議に思いながらも、

「はい……」

 と、返事をする。

『……』

 結衣の父親は声を出すのを少し躊躇うように聞こえた。

 そして数秒後、


『結衣が昨夜、亡くなりました』


「え……?」

 深雪は言葉を失った。

 向こうの躊躇いから話の重大さはある程度覚悟していたが、その覚悟を上回る内容だった。

「亡く……なった……?」

『……はい。昨夜の人身事故で』

「人身事故……?」

 そう呟いた瞬間、深雪は昨晩食事中に聞いたニュースの内容を思い出した。


『次のニュースです。今日、午後6時ごろJR――駅で人身事故が発生しました。事故原因は現在調査中とのことです。この事故の影響で各線区に運休、遅れが出ています』

「人身事故?大変だな……」

 夕飯の鯖の塩焼きを突きながら、深雪はそう言った。

「――駅か……この駅確か結衣も使ってたよな。巻き込まれたりしてないかな」

 深雪は結衣にLINEを送ろうとスマホを手に取ったが、そこで充電が切れていることに気がついた。

「あ、充電……」

 箸を置きスマホを手元の充電器のコネクトに差し込むと、再び食事に戻った。

「まあ、連絡は後でいっか」


「ああ……嘘……」

『……』

「本当に結衣は……亡くなったんですか?まさか、そんなことないですよね?結衣が亡くなるなんて……間違いってことも……!」

 深雪は結衣の父親にそう問うたが、返事の代わりに帰ってきたのは、重苦しい沈黙だった

「嘘でしょ!?」

 深雪はベッドから飛び降り、すぐさまテレビをつけた。

『おはようございます。6時のニュースです。まず最初のニュース。昨夜発生した人身事故で東京都の女子大学生、妃 結衣さんが死亡しました。原因を自殺を見て警察は捜査を進めています』

 無慈悲にも淡々と情報を伝えるアナウンサーがとても怖く見えた。

「う……そ……そんな……」

 深雪はゴトリと手からスマホを落とし、その場にペタリと座り込んだ。

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