第25話 記憶
目の前を走馬灯のように過去の記憶が駆け巡る。
あの日から今日までの全てが波となって押し寄せる。
目まぐるしく変化する記憶の中で、その一瞬一瞬が容易に思い出された。
それは不思議な出会い。
小さなリスに連れられて辿り着いたの森の中。
白いローブを纏った少女は、切り株の上で倒れていた。
名前も家も家族もわからない。
仮の名前でもいいからと、白いローブのトナカイから頂いたその名前。
『レノ』と呼ぶと彼女は嬉しそうに返事をした。
たくさんの夢を運ぶサンタクロースを導くのはトナカイの役目。
そのたくさんの夢をたくさんの人に導いてあげてほしい。
そんな想いも込めてつけた。
耳が聞こえないと彼女は言った。
嫌われたくなかったと彼女は言った。
大切な家族だ。
嫌うものか。
初めてのお出掛けでくれた黄色い花の首飾り。
心を込めて作ったのであろう、丁寧な作り。
結局枯れてしまったけど、貰った時の感動とともに今も心の中にあり続けている。
枯れかけた涙が頬を伝う。
忘れる事のできない思い出。
笑いあり、涙ありの濃密な時間。
かけがえのない『家族』しての思い出が浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。
もう彼女とは合わせる顔がない。
今度こそ手遅れだ。
二人の溝をさらに深めた原因など容易に想像できる。
早まった己の衝動が全てを終わりへと導いた。
残された二人には申し訳ないけれど、これからやることは決まっている。
荷物をまとめよう。




