表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/306

第22話 嫌い

 心臓の鼓動が速まるのがよくわかる。

 大きく深呼吸をして自らを落ち着かせる。

「ふぅ……」

「大丈夫ですか?」

 ドアノブに手を掛けサヤが振り向く。

「なんとか、ね。謝ろう、全部」

 サヤはコクリと頷くと扉を開けた。


 カーテンで閉ざされた、暗い部屋に灯るランプに照らされる二つの影。

 見覚えのあるシルエット。

 どちらの影がどちらかも、聞かれれば答えられる。

 一歩、足を踏み出す。

「レノ、ちょっと、お話がしたい……いいかな」

 恥ずかしさに顔を染めて、静かに問いかける。

 するとベットからトゥーナが飛び降りて来た。

「お母さん!しっかりレノを励ましてあげて!」

 そう言って扉の向こうに消えてしまった。

「ユイさん、やることやって二人とも笑顔で帰って来てください!」

 サヤもそう言い残すと扉をそっと閉めて出て行った。

 パタンと音が鳴り、今この空間には先ほどと同じように私とレノの二人きりになった。

 黙っていては仕方がない。

 謝るのは私の方だ。

「レノ……?さっきはごめんなさい」

 返事はない。

 ベッドの上で膝を立てて座っているレノ。

 視線だけが注がれる。

「ごめんなさいじゃ済まされないことをしたのはわかってる。出て行けとか二度と帰ってくるななんて、間違っても言っちゃいけない」

 胸の奥がキュッと痛む。 

「こんなの母親失格だよね……大好きな娘の心に傷を付けちゃった時点でもう……」

 ポロポロと頬を伝う涙。

 寝巻きの袖で目頭を拭うが、涙は止まらない。

「本当に情けない。大好きだ、愛してるなんて言ってるけど結局は自分の勘違い。一歩的に愛を押し付けてそれで満足してた」

 レノの視線は相変わらず私を見つめている。

「一回考え直すね。このままじゃ絶対にダメ。色々考え直して、場合によってはもう……二人とは……」

「やめてよ!」

 今まで黙っていたレノが急に声を上げた。

「やめて!お母さん前自分を否定しちゃダメって言ってたじゃん!でも、なんで……なんで自分のことになると否定ばっかりするの?」

「それは……」

 言葉が出ない。

「自分で言ったんだから責任持ってよ!人に言っておいて自分は実行できないならもう何も言わないで!もう黙っててよ!話しかけないで!」

 全身から血の気が引いていく気がした。

「あ……レノ……?」

「もうお母さんなんて大っ嫌い!嫌い!嫌い嫌い嫌い!」

「レノ……」

「話しかけないで!もう何も言わないで!」

 レノは布団を被ると大声で泣き出してしまった。

 嫌われた。

 完全に嫌われてしまった。

 謝るつもりが、悪化させてしまった。

 全てを失った。

 もう何もかもが終わった。

 レノに言い放たれた言葉が脳内で何度も再生される。

 思わずその場にへたり込んでしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ