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第16話 清く正しく美しく

 雪玉が飛び込んでくる。

 時折聞こえてくる高らかな笑い声。

 大樹の裏に身を隠し、少しでもはみ出せばそれは死を意味する。

 木の幹に雪玉が当たっては崩れ、下に積もる。

 耳元をかすめる雪玉。

 弾けて散った雪が手や顔に飛び、冷たい。

 これは雪合戦のはずなのだ。

 雪合戦のはずなのである。

 それぞれがチームを組んで、雪玉を投げ合い敵を倒す。

いたって簡単な、味方とのチームワークを試されるゲームである。

 ゲームであるのだ。

 ルールに則って、清く正しく美しく戦うはずなのだ。

 しかし今のこの状況。

 圧倒的な物量で味方の陣地を蹂躙され、押し込まれた挙句、破壊不能オブジェクトの裏に隠れていると言ったところか。

「ちょっとこれ酷くない!?」

 木の裏にいるであろう三人にそう声を上げる。

 この戦いに清さも正しさも美しさもない。

 ただ敵を倒すことを目的とし、確実に狩ろうという熱意が雪玉の弾幕から感じ取れる。

 何か反撃をと、目の前の雪を掬って球の形に整えて、後ろの見えない敵に投げる。

「当たるわけないか……」

 当然である。

 位置のわからない敵に勘で投げても当たるわけがなかろう。

 私の努力もむなしく、数分後には物の見事に雪まみれにされてしまった。


「あれは酷すぎるよ……」

 雪で濡れた服を脱ぎ捨て真っ先にお風呂に飛び込んだ私は、足を抱えて言った。

「まあ、確かにやり過ぎたって感じもしますけど……」

 サヤが申し訳なさそうに口を開く。

「オーバーキルすぎるよぉ……」

 嘆く私にトゥーナが寄り添ってくる。

「またやろうね?」

 今度こそまともに戦いたい。

 私も雪玉を投げて、敵を倒して活躍する。

 もう二度と一対三にはさせない。

「次は二人組でやろう?」

「あぁ……レノ……レノは優しいね」

 よしよしとレノの頭を撫でる。

「でもサヤさんが強すぎるからいけないんですよ?あの試合の前にやったやつ覚えてますか?」

「……うん」

「じゃあ仕方ないです」

 当然と言った様子で胸を張るサヤ。

 誇らしげにお湯に浮かんでいる胸が憎らしい。

「お母さん強いからね」

「球が速かった……」

 あの試合の前。

 バトルロワイヤル形式でやった時のこと。

 いつ鍛えたかわからない腕の筋肉が途轍もない動きをし、次々とサヤたちを倒してしまった。

 それもあり、一回だけ一対三にしようと提案され渋々了承した結果があれだ。

 自業自得のようにも思えなくもないが、どうなのだろう。

「次こそは二体二だからね。それは約束」

 もうあんなプレイは嫌だ。

 寒いし冷たいし、何より寂しい。

 味方のいない人の気持ちが少しわかった気がする。

「じゃあ今からやろ!」

 突然湯船から立ち上がってトゥーナ。

 せっかく体も温まったと言うのに、この子のこの元気は一体どこから出て来ているのだろうか。

 少なくとも今の私にはわからない。

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