第12話 雪かき
「とりあえず雪かきしよっか」
三人を集めてそう言った。
「私とサヤで雪壁を崩して、トゥーナとレノで側面の雪壁を固める。これでやっていこう」
それぞれにスコップを渡して作業方法を説明する。
「今の説明でわかった?わからない人は手を挙げてみて?」
大丈夫そうかな。
そう思ったらサヤが手を挙げた。
「どこまで雪かきします?」
「あ、そうだね。それ話してなかったね」
今回の最終目標は街道までの雪かきである。
「できるなら街道までやりたいんだけど」
それを三人に伝えてみたのだが、なぜか微妙な表情が返ってきた。
「あー、今日はそこまで行かなくてもいいよ。最終的に街道までやりたいってだけだから」
三人の表情が一気に緩んだ気がした。
「今日はできるところまでやって終わろう?」
そう問いかけると、
「わかりました!」
「了解!」
「頑張る……!」
それぞれから元気な返事が聞こえた。
「じゃあ始めよっか」
二人で横に並び、目の前に立ちはだかる雪壁にスコップを差し入れた。
上から少しずつ崩しては横に放り投げる。
それを、後から続くトゥーナとレノが固めて行く。
「思ったより大変ですね……」
サヤがコートも袖で汗を拭きながら言った。
「私のおじいちゃん家が新潟にあるんですけど、あっちの方は機械で雪かきするんですよ」
唐突にサヤがそんなことを言った。
「こっちにはないよ?そんな便利なものは」
「ですよねー」
残念そうにこちらの顔を覗く。
「すごく楽なんですけどねー、あれ」
「気持ちはすごくわかるよ。わかるけど、ない」
「ですよねー」
サヤが言ったように、除雪車を言うものを何度かテレビで見たことがある。
前に着いた回転する羽で雪を書き込んで、雪を左右に吹き飛ばすという代物だ。
今私たちが四人がかりでやっていることを、技術の恩恵を受けることで、たった一人の人間が平然とやってのけてしまう、いわばチート。
今の私たちから見ればチートも同然である。
機械に頼らない生活もなかなかいいものだと思っていたけれど、実際はかなり大変そうだ。
「どれくらい来ましたかね?」
サヤが背伸びをして雪壁の向こうを覗く。
「どう?」
私も覗く。
「…………」
「…………」
二人で顔を見合わせた。
「どうしたの?」
「大丈夫?」
トゥーナとレノが手を止めて問うてくる。
「さ、始めようか」
「うん、頑張ろう」
何も見ていない。
私は、何も見ていない。
せっかく四人でここまで頑張ってきたのに、まだ街道すら見えていないと言ったら、気持ちがめげてしまいそうだった。
今見たことは全て忘れよう。
初心に戻って作業を再会しよう。




