第9話 涙
私の胸に顔を埋めて少女が泣いている。
なんと声をかければいいものか。
そのまま頭を優しく撫で続ける事ぐらいしか思いつかなかった。
「ごめんなさい、ユイさん。その……服が……」
涙で濡れた寝巻きを見て、サヤが謝罪の言葉を口にした。
「それくらい大丈夫だよ。気にしないで」
寝巻きの胸のあたりが少し湿っている。
サヤは赤らめた頬を隠すように俯いて、言った。
「変な夢を見てしまって。そこに辰茉がいて、でもどこかに行っちゃって……」
「辰茉?昨日話してくれた子?」
昨日の夜、二人でお話をしていた時に耳にした名だ。
確かサヤの幼馴染で。
「そうです。昨日話した、彼……」
確か家族のように親しい子だったと聞いた。
「夢に出てきたんです。辰茉が」
私が相槌を打つと、彼女はゆっくりとその夢の内容を話し始めた。
二人で並んで壁にもたれ、私はサヤの話を聞いた。
ふと窓の外の景色が目に入る。
雲の隙間から少しだけ朝日が覗き、しかし雪は降りしきり、積もった白の結晶は窓を半分ほど埋めていた。
「今思うと、あれは本当に辰茉だったのかな、なんて……」
とても寂しそうだ。
「雪……すごいですね」
サヤが顔を上げ、外を見てそう言った。
「雪遊び、出来ますかね?」
雪を見てはしゃぐ彼女からは、先ほどの寂しさはもう感じられなかった。
「まず、玄関から出れるかな」
私がそう言った途端、部屋の扉が勢いよく開かれ、
「お母さん!雪が積もってる!」
「外、行こ」
元気な我が娘たちが飛び込んできた。




