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第5話 想い

「顔赤いよ?」

 そう言われ、思わず頬を手で覆い隠した。

「彼のこと思い出しちゃった?」

 両手で頬を覆い隠したまま首を左右に振る。

「幼稚園からの幼馴染ってすごいよね」

 目の前に座る女性がそう言った。

「私にはいなかったな。幼馴染」

 頬から手を離し、私は首を傾げた。

「私ね、結構な頻度で日本中をあっちこっち移動しててね。ちょうど小学校とか中学校の時に」

「そうなんですか?」

「父親の仕事の関係でね。だから長くて幼稚園の時に三年間くらいかな……」

 女性が指を折って数え始めた。

「十二年間は空白かな。移動中は長くても半年とかだったし」

「半年……ですか?」

「うん、半年。こうやって聞くと短く感じるけどね、意外と長いんだよ。半年って」

 半年ごとに学校が変わる。

 半年しか同じ学校にいられないとすると、もしかしたら同じ学年の人全員と話すことすら、出来ないのではではないだろうか。

「そのおかげでね、コミュニケーション能力は高くなったね」

 女性が皮肉っぽく笑う。

「例えば、ずっと連絡を続けてた子とかはいなかったんですか?」

 自然とそんなことを聞いていた。

「連絡って言うのはね……時間が経つと自然と止んじゃうものだよ。顔を合わせないとなおさらね。あ、紅茶入れる?」

 空のカップを煽った私を見てそう問われ、首を縦に振った。

 橙色の液体が白いカップに注がれる。

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

 女性は自分のカップにも注いだ。

  そして一口啜る。

「学校を離れるごとに大体二十人くらいの子と連絡先を交換してたけどね、実際一ヶ月も経つと一人か二人くらいとしか会話しなくなって、数ヶ月も経つと何も、ね……」

 しみじみとそう言う彼女は、憂いを帯びた顔で机を見つめている。

「私が死ぬ前に連絡してたのは……四人くらいだったかな。その内二人とはもう一回会った気がする」

「……そう、なんですね……」

 どこへ行っても顔見知りのいた私には到底理解ができない。

「幼馴染がいるのって、すっごく羨ましい」

 幼馴染。

 私には幼稚園からの幼馴染がいた。

 どこへ行っても幼馴染がいた。

 小学校も、中学校も。高校も。

 同じクラスで、家が近くて。

 休みさえ合えばどこかに出掛けて。

 家族のような幼馴染がいた。

「幼馴染って言える人がいて、本当に羨ましいな」

 ふと幼馴染の顔が浮かんだ。

 明るい笑顔でいつも手を差し伸べてくれた。

 どんな時も一緒にいてくれて、まるで恋人のように。

「また顔赤くなってるよ?」

 今度は自分でもそれがよくわかった。

「彼のことを思うと、顔が赤くなっちゃいます」

 女性は首を傾げた。

「今……彼に、辰茉に私の想いを伝えられる方法はないでしょうか?私の本当の想いを」

 私がそう言うと女性は困ったような顔をした。

「辰茉に……好きって伝えられるような方法を、ユイさんは知りませんか……?」

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