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第4話 記憶のダム

「そういえばユイさんって向こうの世界で好きな人とかいました?」

 唐突にサヤがそんな事を聞いて来るものだから、危うく紅茶を吹き出すところだった。

 軽くむせながらサヤに聞き返す。

「何?好きな人?」

「はい、好きな人とか……彼氏とか?」

 突然どうした。

何故(なにゆえ)……?」

「え、何故(なにゆえ)って。別に気になっただけですよ?ユイさんモテそうだし」

「モテそう……?私が……?え?」

「え?」

 お互いに首を傾げて見つめ合う。

「告白されたことありませんでした?」

「告白?告白か。うーんと……」

 少なくとも大学に入ってから告白された記憶はない。中学高校の時はあった気がしないこともないが。

「結構告白されたんじゃないですか?どうですか?覚えてないですか?」

「うーむ……」

 脳内に残る記憶として覚えているといえば、高校の時のことであって、それ以前はなんとも言えない。

「自宅の机の中見ればわかるんだけどね」

「そうなんですか?」

「何通か手紙が残ってるはずだけど、やっぱり呼び出しとか口頭で言われたのは忘れちゃうね」

「え?」

「え?」

 もう一度サヤが首を傾げた。

 釣られて私も傾げる。

「忘れるほど告白されたんですか?」

 サヤのその言葉をキッカケに、ダムが放水するかの如く記憶が溢れ始めた。

「あー……もしかしたらそうかもしれない……」

 急に鮮明に思い出される過去の記憶。

「今なら全員の名前言えるかも」

 何故だかわからないが、私の過去の恋事情はダムで堰き止められていたらしい。

「うわ、やっぱりモテてたんじゃないですか。裏切り者」

 裏切り者って。

 苦笑する私を他所に、サヤは紅茶をグイと煽った。

「その流れで聞きますけど、彼氏いました?」

「彼氏?」

 再び記憶のダムが決壊しない限り、自分の中ではいなかったと思い込んでいる。

「いないね」

「え?」

「え?」

 なんなんだこれは。

「告白はたくさんされたのに、彼氏は一人もいなかったんですか?」

「いなかった、って言うか、作らなかった、って言うか……」

 曖昧な私の答えにサヤは目を細めた。

「ふーん……モテ女の特権ですかね」

「え、なにそれ」

 初めて聞いたぞ、『モテ女の特権』なんて。

「じゃあ、そんな恋愛マスターのユイさんに質問いいですか?」

「なによ恋愛マスターって……」

 よくわからないあだ名に苦笑い。

「例えば、ですよ?幼稚園からの幼馴染がいるとします」

「うん」

 幼馴染か。

 日本全国を数ヶ月ピッチで飛び回った私にはいなかったな。

「それで?」

「高校までずっとおんなじクラスでした」

「うん」

 ずっと同じクラスって言うのはなかなかすごいな。

「その男の子と休日よく出かけて、学校帰りには駅まで送ってくれて、夜寝る前と朝起きた時にメッセージくれる。この時相手ってどう思ってると思います?」

「どう思ってるか?サヤに向けて?」

「あ、わ、私じゃないですよ?その、女の人の方に、一般的に見て……」

 一般的にか。

「どうだろうね。やっぱりそれは本人に聞いてみないとわからないんじゃないの?」

 それが単純に十数年間共に過ごしてきた仲から来るものなのか、どこかで恋心に変わったのか、それは第三者から、ましてや聞いた話からなどわかるわけがない。

「でも、好きになってる可能性ってのもあるんじゃない?もしかしたらお互いに、とか」

 そうサヤに向けて言うと、

「そう……ですよね……」

 何故か頬を赤く染めていた。

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