第3話 家族
淡い光を灯す炎がランプの中でゆらゆらと揺れている。
窓に映った自分の顔の向こう側で、白い小さな塊が紙吹雪のように舞っていた。
雪が、降っている。
寒期の訪れ。
「雪……ですね」
「うん、雪だね」
二人で窓の外を眺める。
暗い闇に舞う白い結晶は、ランプのオレンジに照らされてぼんやりと浮かぶ。
先程から降り始めた雪は少しづつ積もり、窓枠にこんもりと雪の山が出来始めていた。
寒そうな外とは対照的に、部屋の中はとても暖かい。
とある家から引き取った暖炉が、思った以上にその性能を発揮していた。
「意外と暖かいですね」
「ね。外は雪が降ってて寒そうだけど」
ここ暖炉のお陰で、寒気をなんとか超えることはできそうだ。
紅茶を一口啜る。
この前村で買ってきた新しい茶葉。
いつもとは少し違う香りに包まれた。
月が南中する頃、娘二人はすでに深い眠りにつき、私とサヤは静かにお茶の時間を楽しんでいた。
あれからこの家で共に過ごすことになったサヤ。
自分の夢、目的、目標を見つけるまでの間、四人で暮らすことになった。
家族が一人増えたわけだ。
「私も……家族、ですか?」
「サヤ?当然、家族だよ。この家にいる限りはね」
そう答える。
「家族……新しい家族ですね」
「うん。新しい家族」
紅茶をもう一口啜る。
「ユイさんは、家族のことどう思ってますか?」
唐突にサヤがそんなことを問うてきた。
「家族?それって今の?それとも向こうの?」
カップをソーサーに戻して問う。
「えっと……向こうの、です……」
「向こうの家族ね……」
天井を見上げ、考える。
「へんな質問でごめんなさい。でも、ちょっと気になっちゃって……」
サヤが申し訳なさそうに言った。
ジッとこちらを見つめる視線が感じられる。
そうだな、と口を開き、
「私は、感謝してる。前も、今も」
そう答えた。
「兄弟がいなくて一人っ子だったんだけど、充分すぎるくらいに愛情を込めて育ててくれて」
「母親が子供が出来にくい体質で、そこでなんとか生まれたのが私で。二人目は厳しいってお医者さんに言われたらしいの」
「母親はいつも、『結衣だけがいてくれればいい』って。本当は二人目も欲しかったんだろうけど、そんなことは言わずに」
訥々と話し始めた私の昔話に、サヤは頷いて答える。
「確かに親よりも先に死んじゃって、申し訳ない気持ちもあるけど……」
ある日突然目の前からいなくなって、両親がどれほど悲しんだだろうか。
唯一無二の、自慢の娘が突然この世を去って。
お母さんは、お父さんはどれほど悲しんだだろうか。
申し訳ない。申し訳ないのだけれど、
「やっぱり……そんなのをいつまでも引きずってちゃ、この先に進めない。今ここで、あの時と変わらない姿で生活できてるんだから。その生活ができるように生んでくれたことに、感謝してさ……」
「感謝……」
サヤが口を開いた。
「私はそう思っていつも生活してる。サヤが今どう思ってるかはわからない。だから、私の考えを押し付けることはしないけど。そこは自分の思いを大切に、ね?」
「自分の思いを……大切に……」
昔話をして少し乾いた喉を紅茶で潤す。
「少し考えてみます。家族について。もう一回考えて、またユイさんに質問します。『家族のこと、どう思ってますか』って」




