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第1話 駅

「連絡してみたら?瑳椰ちゃんに」

 姉にそう言われた。

「そうだね。メッセージでも送ってみるよ」

 トークアプリを開き、『瑳椰』と書かれたルームをタップ。

 向こうからのメッセージは無し。

 手短に文を打って、送信。

「よし、一応メッセージ送っておいた」

 スマホを机に置き、姉にそう言う。

「は?メッセージ送った?」

 あり得ない、と言った顔でこちらを見つめる姉。

「ど、どうした?辰姉……?」

 恐る恐る問うてみる。

「緊急時にのんびりとメッセージ送ってるアホがいるか」

 ボソリと、呆れた表情でそんな言葉を呟いた。

「…………」

 無言でスマホを持ち上げると電話を掛けた。

 こちらを睨む姉。

 なるべく目を合わせないようにして、コール音の後から聞こえるであろう、瑳椰の声を待った。

 しかしなかなか出ない。

 留守番電話サービスに繋がってしまった。

 それを聞いて電話を切る。

「電話の音が聞こえないのかもね。また時間おいて掛けてみたら?」

 状況を察した姉がそう言った。

「そうするか……」

 妙な胸騒ぎがする。

 何か、瑳椰が大変なことに巻き込まれているような。

「辰姉……俺ちょっと駅まで見てくる」

「は?今から行くの?」

 時計は短針と長針がそれぞれ、七と一を指していた。

「母さん、今から駅行ってくる」

 台所にいる母親にそう声を掛け、リビングを飛び出した。

「ちょっと辰茉!夕飯は!」

 階段を駆け上がる。

 下から母親の叫び声が聞こえた。

 ボディバックに適当に物を詰め込み玄関へ。

 玄関で待ち構えていた母親の横をすり抜けると、靴を履いて家を飛び出した。

 再び聞こえる母親の声。

「帰ってから食べる!」

 振り向かずにそう答えると、自転車にまたがり駅を目指した。


 住宅街を抜け、駅に通じる大通りに出た。

 遠くの方でかすかに聞こえるサイレン。

 そのサイレンを目指して自転車を漕ぎ続ける。

 駅に通じる角を曲がるとそこには、先程テレビで見たままの光景が広がっていた。

 ビルの壁面に反射する赤い光、群がる人、大きなカメラを回すテレビカメラマン。警察や救命士が右往左往していた。

「瑳椰は……」

 この人集りの中から瑳椰を探し出せる可能性は限りなくゼロの近い。

 何か返事は、とスマホを確認してみる。

 特に無し。

 自分を落ち着かせるために深呼吸をする。

「もう少し前に行ってみるか」

 自転車を止めると人集りをかき分けて規制線のところまで辿り着いた。

 一般客のいない、騒然とした駅のコンコースが伺える。

 自動改札機の前で警察官と共にいる男性と女性が見えた。

 女性の方は泣き崩れ、男性の方は呆然と立ち尽くしている。

 直感的に、あの二人が人身事故にあった人物の家族だと思えた。

「思えた」と、それだけなら良かったのだ。

 ただ、「人身事故にあった人物の家族」だと思えただけならば。


 辰茉はあの二人の顔に見覚えがあった。

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