新しい力を
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妖光の館 - 1F
「「「ギィ!!」」」
「チッ……」
私の周囲にはゴブリンが3匹、こちらを取り囲むような形で立っている。
数的には脅威ではない。
しかし、別のところが厄介なのだ。
「【分裂槍】」
最初の時と同じように、3体分の死体が出来上がる。
それを【変異】により手早く解体すると、改めて【霧海】を展開させ直した。
「……やっぱりか」
感知が上手くいかない。
いや、近くのものに関しては出来ているため、言うならば広域感知が上手くいかない、が正確だろう。
正直、それだけでも私にとっては痛手以外の何物でもないのだが。
「はぁ……仕方ない。【霧海】は最低限、感知できる範囲まで狭めて、あとは自分でどうにかしようかな」
実際、そうする他ないのだろう。
ダンジョンメインで潜っているプレイヤーなんかは、自動筆記系の汎用魔術を応用して白紙の地図に自らマッピングしていくと聞いたが、成る程。
確かに、感知や索敵系の魔術で広域感知が出来ないならばそれの方が迷わないし便利だろう。
それに一度クリアしてしまえば、その地図は後で売りに出せて金にもなる。
やらない理由がなさそうだ。
「自動筆記系、探してみようかな……」
まぁ、今回はそれは出来ないため自力でなんとかするしかないのだが。
しばらく進んでいくと、またもゴブリンに出くわした。
今度は5匹と、数が多くなってはいたがまだ【分裂槍】1本だけで対処できる量だ。
「でも、なんか妙だな……」
ダンジョンだというのに、ここまでゴブリンのみしか見かけていない。
モンスター駆除を頼まれた手前、入る前に少しだけここで出現するモンスターについては調べておいたのだが……全く意味を成していなかった。
そも、ここにはゴブリンなんて出現しなかったはずなのだ。
空気に流され普通に戦っていたが、明らかにおかしい。
何かイレギュラーが発生していると考えた方がいいだろう。
「ゴブリン系の上位種でも外から入って、この中で大量増殖でもしたのかな?」
ゴブリンと言えば、ファンタジーではオークの次に女を襲い数を増やすことで恐れられているモンスターだ。
閉鎖空間でも、他の生物が居ればそれだけで増えていくのではないだろうか。
それに加え、もしゴブリン系の上位種が紛れ込んでいたのであれば。
普通の妖光の館のモンスターでは基本的に相手にならないはずだ。
そう考えると、このゴブリンしか出て来ていない状況は一応納得はいく。
「うーん……でもなぁ。もうちょい情報が欲しいともころだね」
手持ちのカードで何ができるかを考え……そして思いつく。
……あぁ、あの方法なら何かしら出来るのでは?
考えつけば行動は早いもので、私はインベントリ内から糸を取り出してからその場を後にする。
いやぁ、楽しみだ。
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暫く彷徨っていると、ゴブリン1匹で歩いているのを発見する。
こちらにまだ気づいていないようだったため、後ろから近付いて【魔力装】によりすぐに殺す。
「よしよしーっと。まずは【変異】」
周囲の警戒は怠らずに、されどこれからする作業を考えてその場に座り込んで作業する。
【変異】により、皮と肉、臓物などに分けられたゴブリンの死体を使う。
「皮の傷口を糸で縫って中身が漏れないようにすれば良いんだったよね」
そして殺した時についた傷口を糸で止めていく。
ゴブリンの剥製のようなものができるが、これで終わりではない。
「次に、魔石を出来上がった剥製の中に叩き込んでーっと。最後に【傀儡-人形作成】発動」
早速、新しく手に入れた魔術である傀儡魔術を使ってみる。
今回使った【人形作成】は、モンスターの皮などを使う人形を作成するものだ。
出来上がる人形のステータスは、元にしたモンスターのステータスに左右されるため、あまり弱いモンスターを使うと、戦闘では役に立たないのだ。
「おぉー立ち上がった。さっきまでふにゃふにゃだったのにしっかりしてるじゃん」
触ってみると、魔石以外何も入れていないはずなのに、意外としっかりとした触感が返ってくる。
恐らく魔石をアンテナに私の魔力を受信し、その魔力が動力源以外にも筋肉やらの役割を兼ねているのだろう。
【魔力視】で観てみれば、私とゴブリン人形の間に魔術的な経路が出来ているのが分かる。
……これ、応用したら何か出来そうだな。
事実、何かしら出来るのだろう。
意識してみれば、ゴブリン人形との間にある経路を感じ取ることも出来た。
これを使って魔術を流し込めば面白いことができそうだ。
「じゃ命令を出せばいいんだったよな【傀儡-簡易指揮】っと」
予め用意しておいた羊皮紙をインベントリから取り出して、ゴブリン人形の額に貼り付ける。
羊皮紙には、『敵を探し出し報告する』という簡単な1文が書いてあるだけだ。
元々、傀儡魔術を取る際に近くにいたガビーロールに言われ事前に作っておいた指揮用の羊皮紙で、傀儡魔術は基本的にこれを行うことによって人形に行動をさせる。
「さぁ行っておいで」




