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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
番外2

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95/242

空を見上げよう

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくお願いします


ゲーム内、森の中から空を見上げる。

この空は、言ってしまえば頭の中に直接映像として叩き込まれて見せられているものだ。

だからこそ、現実のものではない。


「でも、リアルだなぁ……」


現実と同じように、雲は流れ、雨は降り、そして青空になる。

たまにモンスターらしきものが飛んでいたり、魔術師が飛んでいるという現実ではありえない点も存在するのだが。


だが、まぁ。

私はこの空が好きだ。

もしかしたら現実の空よりも好きなのかもしれない。


だってそうだろう。

現実の空は、やはりどこまでいっても現実なのだ。

ゲームのような、どこか不完全さが感じられない現実の空より、このゲームの中の空が好きなのだ。


「んーっ、良い空。君らもそうは思わないかい?」


身体を伸ばしながら、私は……レンは周りに転がっている山賊ロールをしていたPKサバト所属のプレイヤー達へと語りかける。

殺してはいない。彼らを殺すことに意味があるとは思えないから。


「ぐっ……」

「ぁ……」


もっとも、死ぬ一歩手前までボコボコにしたのだが。

しかし、別に良いのだ。

反応は元から求めてはいない。……というか、求めているのなら、最初から喋れないほどにボコボコにはしない。


「あぁ。なんて、高い空。ゲームの中ならたどり着けるのかな、あの上に」


私は転がっている1人のプレイヤーに腰掛けると、空に手を伸ばす。

その手には、未だ何も掴めない。



-----------------------



ゲーム内、街の中から空を見上げる。

少し前に森の中で見上げた空と、あまり変わらないように見えて、実はかなり違う空。

目を凝らしてみれば、薄く、それでいて強力な結界が張られているのがわかる。


「うん、それでもこの空は好きだね」


私は現在、ピエロのような恰好をしながら街を練り歩いている。

見る人が見ればプレイヤーだとわかるだろうが、それ以外にはそういうNPCだとでも思われているのだろう。

プレイヤーから感じる視線の少なさがその理由だ。


……何やら面白い事が起きそうだね。


「……で、なんで君は私の所に?明らかに君はここにいるべきじゃないだろう?」

「貴女が来ててほったらかしにはできないわよ、レン」

「ハハ、前から思ってたけどハロウは苦労人だねぇ、お疲れさま」

「それがわかっているのなら、苦労を掛けないように努力をしてほしいわ……」


私の隣には、このレギンという街の中でもダントツの知名度を持つプレイヤーが歩いている。

一応隠密系の装備をしているのか、周りから向けられる視線はそう多くない。


「というか、君今それ【湖に住む人食い婆さん】使っているね。後の2人分は?」

「1人は今試合中、もう1人は試合の解説を最近知り合った子にしているわ」

「おや、君はこっちでもそんなことをしているのか。……馬鹿なのかい?」

「言葉は選びなさい」

「あっちち、冗談だよ」


昔から冗談の通じない友人だ。

まぁそれも彼女のいいところなのだろう。


「で、なんでこの街に?」

「ん、面白い事が起きそうだなぁって。迷ったんだけどこっちに来た」

「へぇ……。それって私も巻き込まれそうかしら」

「うん、だね。絶対巻き込まれるっていうか、矢面に立たされると思うよ」


そういうと、彼女は肩をガクリと落とす。

やはり面倒事は嫌いなのだろう。


「じゃあレン。そろそろ試合終わるから、私は行くけれど……悪さだけはしちゃだめよ」

「お母さんか。大丈夫だよ、私もわかってるから。今回は傍観者寄りでいるつもりさ」

「それならいいけれど。じゃあね」


そう言ってハロウは消えていった。

さて、私も今日泊まる宿を見つけないと。



-----------------------



たくさんのプレイヤーの中、会議の場で空を見上げる。

まだ結界は消えておらず、それどころかこの街は現在襲撃を受けていた。


「うん、青い青い空。これならまだ皆頑張れる」


そう言って視線を下に戻し周囲を見渡してみると、かつて森で出会った女の子を見つけた。

確か名前は……シロ、だっただろうか。おそらく偽名だろう。

しかし、なるほど。

確かに私がこちらの街へ惹かれるわけだ。彼女がいるなら仕方がない。


……少し前に出会ったよしみということで、この場は少しだけ手を貸してあげようかな。

インベントリから羊皮紙を取り出して、魔力にて持っている情報を書き出しておく。

それをあたかも配っている風を装って近づいて渡してあげよう。


「これドウゾ!」

「あ、ありがとう」


一枚渡し、そのまま彼女の視界から消える。

うん、我ながら完璧な手の貸し方。これは天才なのでは?


「……しかし彼女、面白いものを付けていたなぁ」


左腕。

そこからは私の魔力を感じた。……いや、私の魔力というには変質しすぎていて、明らかに別物にはなっていたのだが。

しかし、元をたどれば確実に私が作った何かをあの左腕には使っているのだろう。


「誰だろうなぁ渡したの。赤ずきんかな、それともテセウス?チェーちゃんはまだ会ってないだろうし……。あっ」


1人、確実にそうだろうという人物が知り合いにいるじゃないか。


「あの変態ゴーレム野郎……いやでも面白そうだしいいかな、今回は」


空を見上げる。

見えるものはその時々で変わる空。

これから、私には何が見えるのだろうか。


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