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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第二章 新しい土地で知ろう

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実に簡単な話

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくお願いします


黒死病。

ペストと呼ばれるそれは、実際に現実で多くの死者を出した伝染病の一種だ。

それに罹ると、皮膚が黒く変色していくことから、黒死病と呼ばれた……らしい。


また、黒死病を題材とした作品も多く、今でも有名なものがいくつかあるため、どこかしらで触れた事のあるという人は少なくはないだろう。

私だって、漫画で初めて存在を知りそこから自力で調べたタチなのだから。


「ふふっお姉さん達、ハンスの代わりに私と一緒に踊りましょう?」

「「お断りです」」


さて、そんな黒死病モチーフの固有魔術を発動させているグリムはというと。

特に皮膚が黒くなっていっているわけではない。

むしろ元気にこちらへと突進を繰り返してきているため、彼女が纏う黒死病らしき黒い霧を避けるのに、こちらが元気じゃいられない。


しかし、どうしたものか。

魔術も物理も、生物もダメ。

これだけ強力な固有魔術なのだから、その分魔力消費も多いはずだが、何かしらの手段で魔力を得ているのか魔力切れを狙うことすら出来なさそうだ。


「リセットボタンさん、何か良い案あったりします?」

「あは、私に聞くかぁ。現状私の固有魔術で対抗出来そうなのはハンスに使っちゃったからなぁ……」


突進を繰り返してくるグリムを避けつつ、言葉を交わす。

リセットボタンは少し悩むような、考えるような顔をしながらこう返してくる。


「そういえばクロエさん」

「なんでしょう?」

「物理攻撃ってどんな攻撃したの?」

「……【変異】で作成した槍での攻撃ですね。木と岩で」


そういうと、彼女は何か思いついたかのようにニヤリと笑う。


「じゃあこれは効くんじゃない?」


そして、その辺に落ちていた拳大の石をグリムに投げつけた。

そんなのすぐに塵になってしまうのでは?と思いながら、その石の行く末を見ていると、そのまま黒い霧の中を突き進み、グリムの腹辺りへと当たった。


「ぐっ……!?」


グリムは苦しそうな声を上げながら、こちらを睨み付ける。


「これは……?」

「うん、予想通り。……簡単な話だよ。あれは恐らく魔力に反応して危害を加えてくる固有魔術ってこと」

「でも、私の槍は」

「いくら攻撃するときに魔力を消費しなくても、魔力を使って作ったものには、魔力の残り香のような……薄い残滓が残るものなのさ」


リセットボタンは追加で石を投げながら説明する。

魔術は勿論、ホムンクルスまでも塵へと変わったのは魔力の有無で判定しているのだろうと。

それがどれほど小さく弱々しい魔力でも、反応したものはすべて塵へと変えるのだろうと。


「っと、まだ信じられないような顔をしてるねクロエさん」

「いや、そんな簡単な話でいいのかなって思いまして」

「簡単な話で良いんだよ。これはゲームなんだ、現実じゃない。だからこそ、対処法さえ分かってしまえば強敵ですら簡単に倒せる」


突進を繰り返しているグリムの顔は、リセットボタンの投げた石に何度か当たっているのか、頭から血を流しボコボコになっている。

恐らく、彼女自身あの状態では大規模な魔術は使えないんじゃないだろうか。


使おうとしても、身体のうちから外に出る魔力は全てあの黒い霧に塵へと変えられてしまう。

身体の内だけで反応するような魔術だけしか使えない。

だからこその肉体接触による、相手を塵に変えようという戦術なのだろう。


「私も手伝いますよ」

「やったぜ。……なんかこれ、魔女狩りかなにかの光景に見えなくもないなぁ」

「やめてください、立派な戦闘ですよ」


対処が分かってからは早かった。

先程とは変わり、私達が石を投げグリムがそれから逃げる。

完全に攻防が反転した。


たまにグリムが突進してくるのに合わせて、こちらが避けるだけ。

それ以外は遠くから石やらインベントリ内にあるアイテムを投げ、攻撃や牽制を行う。


……見た目子供に石やらを投げつけてる大人達って、側から見たらマズイ絵面だなぁ。


ふと、そんなことを思いながら石を拾っては投げていると。

グリムの様子がおかしいことに気づく。……いや、あれは私の【霧海】の中で切りつけられていた時と同じテンションのモノだろう。


「ちまちまちまちま……うざってぇんだよテメェら!!」

「おぉ、豹変した。意外と怖いもんだなぁ、あの顔で言われると」

「言ってる場合ですか。何かするようですよ」


見れば、彼女は立ち止まりながらも何やら黒い霧を操ろうとしているようだ。

いや、少なからず操作は出来ているようだ。難度が高いのか、少しずつ少しずつと言った形ではあるが。


両手へと黒い霧を操作しているグリムを見つつ、私はインベントリ内に仕舞っていた樹薬種の短剣を取り出す。

そして、【チャック】を二重に発動させる。

位置は私の目の前と、グリムの背後だ。


黒い霧は手の方に集まっているために、背後の方は既に黒い霧は無くなっている。

そしてグリムは身を纏う黒い霧を移動させているからなのか、魔術を使い周囲に不死系モンスターを召喚しているが……もう遅い。


リンクさせた【チャック】から、グリムの背後……首を短剣で深く斬る。


「これでおしまい、ですかね」

「どうだろうね?」


戦闘終了はあっけないもので、グリムはそのまま即死判定を受け、その場に魔術書を落として消えていった


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