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この殺伐とした魔術世界で  作者: 柿の種
第二章 新しい土地で知ろう

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霧と共に

もしよかったら感想、ご指摘などよろしくお願いします


さて。

現状を再確認しよう。


現在、私とリセットボタンの前には2人のプレイヤーが立っている。

ファルシ所属の死霊術師である、グリムとハンス……【童話の人物】と呼ばれる2人組だ。

戦い方としては、死霊術を活かした不死系モンスターの大量召喚。それによる物量作戦だ。


変わって私達。

リセットボタンはホムンクルスを主に運用する錬金術師。その種類は様々で、リーンの森ではホムンクルス同士の連携により苦しめられた記憶がある。


それに加え、私。

特に今更特筆すべき事はない。以上。


「……不利、スぎなイです?」

「突っ込もうって提案したのクロエさんでしょ……」


そういえばそうだった。


「何にせよ、あの詠唱は止めないとまずそうかな」

「さっき知らナイッて言っテませンでしタッけ?」

「歌はね。ただ【童話の人物】の戦い方は知ってるから、そこからの予想……っと!」


と、ここで横から迫ってきていた死肉食いを躱し、足を引っ掛け転がしておく。

死肉食いは動死体なども場合によっては食べるため、残しておいた方が便利なのだ。


さて、リセットボタンの方にも少しずつ不死系モンスターが集っているようだし、こちらはこちらで始めてしまおう。


詠唱を止める。そして殺す。

うん、シンプルで良い目標じゃあないか。


「【霧海】全力展開」


今まで敵影感知用に使っていた【霧海】を、戦闘用に周囲に展開し直す。

戦闘用、といっても霧の濃さくらいしか違わないのだが。


ついでに、【変異】にて岩の槍を作り出し、それを射出する。

狙いは当然プレイヤーの片割れ……グリムという女の子の方だ。

そして同時に私も走り出す。手の中の獲物を突き立てる為に。


狙われたグリムはというと、一瞬目を見開きながらも、笑みを崩さずに1枚の羊皮紙を取り出した。

そしてそれを地面に落とし何事か呟くと、地面からは沢山の骸骨が壁のようになりながら出現。

岩の槍を防ぎきった。


……死霊術による防御魔術!遠距離系は効きづらいかな!


「ハンス、私はあのフードのお姉さんを相手するわ」「じゃあ僕はあっちの白衣のお姉さんだね!」


私は走る勢いそのままに、グリムへと右手の護身石の短剣を突き立てる。

が、いつも通り結界か何かに阻まれ、ガキンという音とともに弾かれる。


「チッ」

「あら怖いわ、もっと笑いましょう?」


感知にて、グリムが右手を後ろ手に隠して何か取り出したのが分かった為、一旦バックステップして離れる。

離れる瞬間に【爆裂槍】と【分裂槍】を叩き込んでおくが、効果はあまり無い。


「お姉さん、お名前は?」

「……あは、死霊術師に名前正直に教エルとでもオ思いデ?」

「えぇーつまらないの!私たちのこと知ってるのね!」


いや、知らなかったんだけどね。

……【爆裂槍】も【分裂槍】もダメ。【怒煙】に関しては傷付るのが前提条件だから、そもそもだ。普通の戦術(・・・・・)じゃあ、私には勝ち目はないだろう。


正直、彼女と私は相性が悪い。

戦う前から分かっていたことではあるのだが。

ある種、今回は自分を使った実験でもあるのだ。

実戦で活かせるのなら、それに越したことはない。


それに、まだ試したい札は残っているのだ。


「……霧、濃くナってキマしたネ」

「?えぇそうね!これじゃあアリスも迷ってしまうわ」

「昔かラ、霧トいうものハこの世とあの世の境界ト言われています。アハ、異世界とも繋がってるトカも私の国の神話デハ言われテいた記憶があります」

「……それがどうしたのかしら?」


グリムはあからさまに怪訝そうな顔をしながら、そう聞いてくる。

そうだろう。戦闘中に濃霧の中両手広げて突然相手が語り出したら、私だって怪訝な顔くらいする。


「……あはは、ではデハ。本当の私は何処にイルでしょう?」

「!」


ここで勿体ぶったかのように【影化】を発動させる。

ズブズブと下へと沈んでいき、やがて私は影の世界へ再び入ることになるが、グリムからみたらそう簡単なことじゃあない。


なんたって、相手がこの濃霧の中、意味有りげな事を言いながら霧の中へと消えていったのだ。

見れば、焦ったかのように辺りをキョロキョロと見渡しながら羊皮紙を取り出している。


……まずは第1段階完了、と。

実はこれ、意外とバレないハッタリなのだ。

何せ、相手の周囲には私の魔力で作られた【霧海】の霧が充満している状態。


視界は悪く、尚且つ相手の魔力が周囲に充満している中で、ありそうな事を言いながら姿を消す。

前もやろうと思ってやっていなかった手だ。

やっていなかった理由は単純。

攻撃方向が、入ってきた影の位置に限られてしまうためだ。


しかし、それもすでに問題ない。


「【チャック】!」


グリムの背中側……丁度死角に【チャック】が出現する。

そう、【異次元連結】だ。

これによって、影の中からでも十分に攻撃可能となった。


そしてそのまま右手の護身石の短剣で、背中をわざと浅く切りつける。

すぐに【チャック】の発動を解き、次は足元へと連結させた【チャック】を発動させ、浅く切りつける。


元々護身石の短剣に付与していた【怒煙】が効果を薄いながらも発揮し、少しずつグリムの身体を蝕んでいく。


薄暗い霧の中、相手の姿が見えず、ただ切りつけられただけで身体が少しずつ動かなくなっていく。

これが、私の普通じゃない戦術だ。


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